離島に越してきてもうすぐ1年半、無事に新年を迎えることが出来ました。
今年も皆様がご多幸でありますよう心からお祈り申し上げます。
令和4年 元旦
離島に越してきてもうすぐ1年半、無事に新年を迎えることが出来ました。
今年も皆様がご多幸でありますよう心からお祈り申し上げます。
令和4年 元旦
最後は、ロケルマ 《アストラゼネカ》
ロケルマは、カリウムを下げる薬
「下げる(lower)」と「カリウム血症(kalemia)」
合わせて「ロケルマ」
発表日は2020年5月20日
ロケルマは、国内初となる非ポリマー無機陽イオン交換化合物の高カリウム血症改善剤
これまでの高K血症改善剤・・
ポリスチレンスルホン酸Na(ケイキサレート)も
ポリスチレンスルホン酸Na(カリメート・アーガメイト)は、
陽イオン交換樹脂で消化管内でNaやCaといった陽イオンとKイオンとを交換し、糞便からKを排泄させる(ポリマー製剤)
ロケルマは、ジルコニウムシクロケイ酸Na
非ポリマー無機陽イオン交換化合物で、消化管内でNaやHといった陽イオンと、Kイオンを交換し、糞便中からKを排泄させ、消化管内腔における遊離K濃度を下げることにより、血中K濃度を低下させる
ロケルマの特殊能力・・カリウム選択性!
Kイオンの直径に近い平均約3Å(オングストローム)の均一な微細孔構造を持ち、消化管内でKイオンを選択的に捕捉し、初回投与開始後1時間から血清K値の低下する模様
これまでの樹脂製剤で報告があった『血中2価陽イオンへの影響』だが、選択性が高いことでMgやCaへ影響を与えずKを低下することができるのは素晴らしいし、即効性はうれしい!
適応も、従来の樹脂製剤には、『急性及び慢性腎不全に伴う高K血症』となっていたが、ロケルマは縛り表現のない高K血症となっている点も異なる
希少金属:ジルコニウム(Zr)は原子番号40の元素で、名前の由来となった宝石のジルコン(ZrSiO4)は無色透明のものはダイヤモンド類似石として,古くから装飾用宝石として用いられている
有効性 【HARMONIZE Global 試験】
日本人を含む国際共同第Ⅲ相試験の補正期治療において、本剤10g を1日3回投与したところ、血清カリウム低下作用は投与1時間後から認められ、投与後24時間で対象患者の63.3%、48時間で89.1%が正常血清K値(3.5mmol/L 以上5.0mmol/L 以下)を示した。
※緊急透析やグルコース・インスリン療法等の既存の緊急治療の代替での使用経験はなく、有効性及び安全性は確立されていないため、効能効果に関連する注意には「本剤は効果発現が緩徐であるため、緊急の治療を要する高カリウム血症には使用しないこと。」と設定されている
今のところ、ロケルマだけで対応できる代替療法とまではなっていない様子
用法用量は、
【通常開始量】
1回10g 1日3回を2日間(最大3日)
その後は1回5g 1日1回に減量
血清Kによって適宜増減
増量を行う場合は5gを1週間以上の間隔をあける
最大1日1回15gまで。
【透析患者】
1日1回5gを非透析日に服用
maxは通常量同量
ロケルマの飲み方
1包5g,10gどちらの場合も約45mlの水に懸濁し服用
味・匂いはなし
溶解しないため沈殿する前に服用
沈殿した場合は水を足して飲みきる
水によって膨張しにくい
注意点 医薬品リスク管理計画(RMP:Risk Management Plan)
重要なリスク
「低K血症」
本剤投与開始時及び投与量調整時は,1週間後を目安に血清K値を測定する
その後は患者の状態等に応じて
また、レニン・アンジオテンシン系阻害剤,抗アルドステロン剤,利尿薬等、血清K値に影響を及ぼす薬剤の用量に変更が生じた場合、血清K値の変動に注意を要す
「うっ血性心不全」
K +との交換で Na +が放出されることから、Na 貯留に伴う浮腫やうっ血性心不全に注意が必要
ちなみにロケルマ1g 中にナトリウムを80mg(食塩0.2g 相当)含有するため、1日10g ×3回(計30g)を服用した際の食塩換算量は6g となる(結構な量)
塩分制限が必要な患者では特に注意が必要
(食事は無塩食!!??)
高K血症の原因は概ね腎不全、もれなく降圧薬服用しているのは容易に想像できる・・減塩食ならぬ無塩食なんて無理なんやから、ロケルマ開始したら血圧上がりそう
上がったらRAS系は触りにくいしそもそも切り替えてることが多いやろうから、CCBかα・β遮断薬・・
患者さんには、
『手足のだるさ、力が抜ける感じ、筋肉のこわばり、呼吸がしにくい、筋肉痛、夜間頻尿が増す(=低K血症』
『浮腫、動悸、呼吸のしにくさ(=うっ血性心不全』
がないか注意してもらう
飲み忘れ時は通常は服用を飛ばし、次回に正しいタイミングで服用するよう指導
新医薬品は厚生労働省告示に基づき、薬価収載後1年を経過する月の末日までは、投薬は1回14日分を限度とされている
このブログで紹介してきた新薬
ロケルマ・・・2021/6/1解除
ダーブロック/バフセオ・・2021/9/1解除
リベルサス・・・2021/12/1解除
と皆さん晴れて全員解除されてます(わーい)
次は、リフキシマ 【一般名リファキシミン】
2016年11月発売 難吸収抗菌薬(海外では30年以上前~)
5年前!笑
リフキシマ・・・言いにくい そして忘れやすそう
Rifaximin(一般名)に由来し、Intestinal flora-Modulating Agent(腸内細菌叢を調整する薬剤) ・・・微妙。。
そのリフキシマは肝性脳症のみに適応を持った抗生剤
感染症じゃないけど抗生剤◎
なにに対して抗生剤を使うのか?
ターゲットは「腸内細菌」
そう。肝性脳症の原因のアンモニア発生源は腸内細菌である
Clostridium 属菌、Bacillus 属菌、Streptococcus 属菌、Bacteroides 属菌、Escherichia coli(E.coli)、Proteus mirabilis(P.mirabilis)等らしいがよくわかっていないそう
ちなみに、、
Wikipedia先生によると、
Clostridium difficile(クロストリジウム・ディフィシル)という健常者の腸管内に少数生息している細菌が引き起こす感染症をCDIと呼ばれていたが、 2016年、表現型、化学分類学、系統発生学による分類に基づいて、新しい属としてクロストリディオイデス属(Clostridioides spp.)と名称変更になったのはご存じだろうか?笑
肝性脳症は肝硬変により、門脈に迂回ルートができてしまうことでアンモニアが代謝されず、血中を巡るために高アンモニア血症となる
アンモニアを下げるためには、
◆蛋白制限 ◆便通注意 ◆合成 2 糖類投与 ◆アミノ酸製剤投与 ◆カルニチン投与 等々
適応外だと、◇腸管内のアンモニア発生阻止
これには、カナマイシン(適応外)が使われていた
この領域に適応された初めての薬がリフキシマ
腸管で抗菌作用を示せばいいので、吸収される必要はない
(理想・・・bioavailability 0%)(経口VCMでもbioavailability 4%程度)
カナマイシンは吸収されると出現頻度不明ながらも有名な副作用:難聴が出る可能性があるため、吸収率は低いほうが良い・・
リフキシマ、カナマイシン共にほとんど吸収されないとの記載があるが、完全に吸収されないわけではなく、カナマイシンは連用により難聴の報告がある
まぁより安全にという意味でも、
リフキシマの適応は肝性脳症による高アンモニア血症のみと限定されていることからも、
リフキシマは肝硬変診療ガイドラインでもエビデンスレベルAとされていることからも、
肝性脳症にはリフキシマがいいのだろう。
用法は
1錠200mg を1日3回 2錠ずつ服用
副作用は、
偽膜性大腸炎や便秘下痢等
ただしこのリフキシマを調べていて思った。。。
『これいつまで処方すれば良いの?』
1錠204円・・1日6錠
1日約1,200円・・1カ月で約36,000円(保険負担3割の方で約10,000円の負担)
肝硬変状態が改善する可能性がある人ならやめどきが来るかもしれないが、Child Cの患者などは、一生飲み続ける?偽膜性腸炎になるまで飲み続ける?ラクツロースのみで行けそうならやめる?
少なくとも年単位・・
リフキシマは肝性脳症に有効
肝性脳症にはラクツロースで効果なければリフキシマ
海外では、下痢型の過敏性腸症候群(日本人も10%~15%)に1回550mgを1日3回2週間で症状が改善した報告(NEJM)あり、数年後には色々な腸の病気に使われているかもしれない
ただし、長期投与に関する、明確なデータがない・・
何例かつかってみないとなんともいえない
リクシアナ(エドキサバン)との取り違えによる死亡事故もあるようなので注意
2017年10月、製造販売元である第一三共とあすか製薬が注意喚起
肝不全の症例を経験し、知らない薬を調べたのでまとめておく。。
ラグノスNF ○ リフキシマ ○ ロケルマ について
ラ行ばっかり・・
まずは、ラグノスNF
ラグノスNF経口ゼリー分包12g|医薬品一覧|医薬品|三和化学研究所
約30年間、便秘薬の世界は沈黙を続けていた・・・
その沈黙を破ったアミティーザ®に始め、リンゼス®、グーフィス®、モビコール®配合内用剤、ラグノス®NF経口ゼリーと続々と慢性便秘症の薬が保険適用となった
従来の酸化マグネシウム等で効果が得られない人に対する治療の選択肢が増えたことはありがたい
そもそも、4週間以上続く便秘症のことを「慢性便秘症」というらしい
このラグノスNF、
ラクツロースのゼリータイプ
作用機序
ラクツロースはガラクトースとフルクトース各1分子よりなる人工2糖類で、ヒト消化管粘膜にはラクツロースを分解する酵素がなく、ラクツロースを経口投与すると大部分が吸収されることなくそのまま下部消化管に到達し、ラクツロース未変化体の浸透圧作用により腸管内に水と電解質が保持されることにより、緩下作用を発揮する。
浸透圧下剤の種類でまさしく酸化マグネシウムの代用
浸透圧をあげるのに従来使われていたマグネシウムは、高マグネシウム血症の心配があるから代わりにラクツロースを使おうという考え方?
また、下部消化管に達したラクツロース未変化体は、腸内細菌による分解をうけて有機酸(乳酸、酢酸等)を生成し、腸管内あるいは糞便中のpHを低下させる→→乳酸や酪酸などの低分子有機酸は浸透圧を高め、腸内への水の移動・・
作用機序をまとめると、
○ラクツロース未変化体の消化管下部への到着後の浸透圧性の緩下作用
○その後のラクツロースの分解後の有機酸による腸管蠕動運動の亢進
ラクツロースのゼリータイプには、ラグノスとラグノスNFがあり、NFは【New Formula】 =進化版
何が変わったかというと、より純度の高い結晶ラクツロースが使用されており、主成分のラクツロース含有量6.5g/包は維持したまま、内容量が16.5g→12gへ軽減され内服しやすくなった(エパデールからエパデールS(←このSはSmall、Smooth、Seamless capsuleのS)への進化みたいな感じ?)
あとは、開封口が改良され開けやすく飲みやすくなったみたい
いつもお世話になっている今日の治療薬2021先生によると、ラグノスには慢性便秘症の適応がないため、便秘に使用したいときは、NFの方になる
いつもは肝硬変の高アンモニア血症に・・と思っていたけど、これからは便秘に・・ともなると、使用頻度は上がりそう
ゼリー好きな俺としては、ゼリータイプのクスリはありがたい
甘みがあるらしく食べやすそう
いつもの薬に錠剤が1錠2錠追加されて飲まされるよりも、ゼリータイプだと薬を飲む感覚の変化があって苦痛も軽減しそう
嚥下の悪いパーキンソン患者なんかにも一石二鳥でいいのかも
ラグノスNF経口ゼリー分包12g(1包)は、ラクツロースシロップ65%製剤では10mLに相当
慢性便秘症に対する用量は、1回2包/2回 最高6包と
効き過ぎる場合は、半分だけ食べてあとは破棄でも良いみたい
相互作用としては、αGIとの消化管副作用増強に注意
ガラクトース血症には禁忌
副作用は、下痢や腹痛
ラグノスとはギリシャ語で『快楽』と言う意味らしい。。
IFにも記載の無かった名称の由来が気になるところ・・笑
おまけ・・・他の新便秘薬シリーズ
2012年に発売となった慢性便秘の内服薬
小腸内のクロライド(ClC-2)チャネル【クロールイオンの通り道】を活性化することで腸内の水分を増やす
妊婦は使用不可
1日1-2回食事の後に内服するカプセル
リンゼス®(一般名:リナクロチド)
2018年より慢性便秘症適応
腸粘膜にあるグアニル酸シクラーゼC受容体を刺激する
作用機序は
○腸液を分泌促進して便秘を改善する効果
○腹痛や腹部違和感を改善
IBSのガイドラインでも推奨され、おなかの張りを改善するには良く効く
1日1回食前内服する錠剤
グーフィス®(一般名:エロビキシバット)
2018年に発売の新薬
回腸末端の胆汁酸トランスポーターを阻害して、大腸の水分量を増やす効果と大腸の運動促進効果
1日1回食前内服する錠剤
モビコール® 配合内用剤(一般名:マクロゴール4000など配合剤)
日本では2018年に慢性便秘症の人に保険適用
マクロゴール4000は水を引きつける効果がありますが、大きな分子なので消化管では吸収されない原理によって便の水分を増やして便秘改善
2歳以上から使用可能
1日1-3回水に溶かして内服
どれも重度の下痢に注意してください
離島診療にはかかせないドクターヘリ
太陽が出ている間はドクターヘリ・夜間は自衛隊ヘリで、島民の命をつないでいる。
ドクターヘリ出動基準例
ドクターヘリは,以下のいずれかの項目に該当する場合に出動することとし,「消防庁救急ヘリコプターの出動ガイドライン」に基づき作成した症例等に準拠して判断する。
ただ、距離が距離なだけに、迅速な要請とフライト、搬送先の決定が必要となる。
これがまた大変。。。
救急要請→救急隊現地到着→状態把握→近隣病院受け入れ調整→近隣病院搬送→島外搬送と判断→ドクターヘリ要請→ドクターヘリ到着→ドクターヘリ離陸→高次医療施設搬送・・・
だいたいはこんな流れだが、ドクターヘリ要請から到着まで最短でも1時間以上。
フライト時間は20分程度なのに。。
そのため、もっと迅速にドクターヘリを運用し、救える命を救うために決められたのが、『キーワード』。
概要としては、キーワードにあたる状態の救急搬送症例は、搬送先の医師がドクターヘリ搬送を決定する前に、救急隊が直接ドクターヘリに搬送を依頼するというもの。
段階としては、
覚知内容からドクターヘリを要請した方が良いと消防職員が判断する場合(救急隊出動途中を含む)
救急要請→救急隊現地到着
→同時にドクターヘリ要請!
救急隊現着時,ドクターヘリを要請した方が良いと救急救命士あるいは救急隊員が判断する場合
救急要請→救急隊現地到着→状態把握→近隣病院受け入れ調整
→同時にドクターヘリ要請!
キーワードの例・・
●外傷
自動車事故:閉じ込められている 車体が大きく変形している,歩行者がはねとばされた等々
オートバイ事故:法定速度以上(かなりのスピード)で衝突した バイクと車両の衝突 等々
転落・墜落:2階以上の高さ,又は下がコンクリート等 等々
窒息事故:溺れている 窒息している 生き埋めになっている
各種事故:バス,航空機,船舶,爆発,落雷
傷害事件:撃たれた 刺された 殴られて意識が悪い
ハブ咬傷:ハブに咬まれた ハブに咬まれた疑い
全身熱傷,四肢切断
●心・大血管疾患(呼吸不全を含む) 40歳以上の胸痛または背部痛(胸背部に関する痛み全て)呼吸困難 等々
●脳血管疾患 人が倒れている 人が突然倒れた,突然の激しい頭痛 痙攣している等々
●その他(心呼吸停止等を含む) 呼吸をしていない 呼吸が変だ 様子がおかしい 等々
こんな感じ。
これらに該当すれば、近隣の医療機関で検査や処置にあたっている間に、高次医療機関からドクターヘリが到着し、救急医やER Nsが応援に駆けつけてくれる。
そして更に、初療対応の結果ドクターヘリ搬送とならなくても、怒られない!(笑)
(オーバートリアージの容認)
ドクターヘリの運航には多額の税金がかかると言われているが、その入り口を締めれば締めるほどトリアージの敷居が高くなり、判断が遅れ、救命率が低下しそう。逆に、緩めれば緩めるほど、バンバンドクターヘリが飛び回り、無駄遣いと言われそう。
そのバランスも重要だが、人の命には代えられない。。
タダフライトになってもいいと言ってくれるから要請しやすいし、エキスパートな人材が応援してくれることで搬送に至らない症例もあることを忘れてはならない。
COVID19の影響はこうしたドクターヘリ運用にも影響を及ぼし、流行期には感染が疑わしい患者は乗せることができなかった。
このような離島の命をまもるためにも、COVID19の流行は早く収束させなければならない。
シャントケアとフットケアの希望の光 フィラピー
フィラピー(FIRAPY)の語源は、
FIRAPY;Far-Infrared-therapy(遠赤外線療法)
血液透析患者さんにおけるシャント機能は、透析効率に影響を与え、閉塞や狭窄を予防することはQOLの改善にもつながる可能性がある。
1990年に台湾で始まり、台湾の透析施設の90%、世界20数カ国の2000以上の透析施設で採用されている。本邦では2018年より販売開始。
米国・欧州を含む数多くのガイドラインに推奨
その後、PADにも効果を示し、フットケア方面でも使用されるようになってきている。
★フィラピーは、特殊な赤外線で非可視電磁波(光線)を発生させ、血管内皮機能を改善する効果があり、透析シャントの血流増加や開存率の改善効果・シャント機能不全の予防が期待できる。
【原理】
赤外線は非可視の電磁波であり,可視光線よりも長い波長を有す。
波長の違いに従って赤外線は、
①近赤外線(IRA:760 ~ 1400 nm)
②中赤外線(IRB:1400 ~ 3000 nm)
③遠赤外線(IRC:3000 nm ~ 1 mm)
に分類され、フィラピーは遠赤外線。
遠赤外線は皮膚や末梢組織の血流改善作用を有するため、外傷・糖尿病および末梢動脈疾患などに起因する虚血性病変や壊死に効果がある。
遠赤外線療法が血管内皮機能を改善することや,冠動脈疾患・心不全・不整脈の患者における内皮機能障害を減少させることを示唆する報告がある。
【使用方法】
週3回の血液透析施行中に30 ~ 40 分間のみ
シャント肢に皮膚から20 ~ 30 cm 離して照射
【使用上の注意】
【作用機序】
短期の温熱効果および長期の非温熱効果がアクセス血流量を増加させ、2つの効果は相加的に作用する
★短期温熱効果★
脈管の拡張とアクセス血流量の増加に○。
皮下10 mm において温度は4°C 上昇し、皮膚から20 cm 離れた箇所からの30 ~ 60 分照射により、皮膚温は漸増して38 ~ 39°C のプラトーに達する。
▶20cm離しましょうという根拠はコレ
★非温熱効果★
上腕動脈の血流依存性血管拡張反応が4%から5.8%へ増加
新生内膜過形成の抑制並びに酸化ストレスの減少
遠赤外線はNF-E2-related factor-2(Nrf2)に依存するHO-1 発現を刺激し、同時にTNF- αが誘導する接着分子の発現を抑制することが報告
▶HO-1 の高発現がフィラピーにおける血管内皮細胞の抗増殖効果および抗炎症効果を説明するものであろうと考えられている。
また、血管機能や動脈硬化性疾患の進展の指標である酸化LDL コレステロールが有意に減少
【使用効果】
シャントケアにおいては、
▶結構地味だけど患者にとってはHAPPYな要素ばかり
【PADへの応用】
フィラピーは皮膚の血流改善作用を有するため外傷・糖尿病および末梢動脈疾患などに起因する皮膚の虚血性病変や壊死に使用されつつある。
まとめ
本邦での使用症例数が少ないのか、あまりエビデンスには至ってないようだが、1透析室に1台あってもいいかもといった感じ
PADに対して、外来使用などできるとさらに有効性はありそうです。
血液浄化からも難治性潰瘍にアプローチ
いくら局所に最良のケアを施しても、そこに血流が来なければ意味が無い
そう、循環あっての創傷治癒
もし血流に問題があるなら、そこを治せば傷は治る
だから、創傷ケアに循環器内科や腎臓内科もコラボする
★LDL及びフィブリノーゲンの吸着による血液レオロジーの改善により、閉塞性動脈硬化症患者の末梢血液循環の改善を導き難治性潰瘍を治療する!
カガクでネガイをカナエル会社
【原理】
セルロースビーズに固定化されたデキストラン硫酸が低密度リポ蛋白コレステロールを、Lトリプトファンがフィブリノーゲンを吸着するため、患者の血液をレオカーナに直接還流させると血液中の低密度リポ蛋白コレステロール及びフィブリノーゲンを選択的に除去することができる
LDL-CとFibを低下させることができる
LDLアフェレシスの進化版!
【適応】診療報酬から
準用技術料 K000 創傷処理2の所定点数を準用 1,680 点
医科点数表 K000 創傷処理
7)(略)当該療法の実施回数は、原則として一連につき3月間に限って24回を限度として 算定する 。
ア)フォンテイン分類Ⅳ度の症状を呈する者
イ)膝下動脈以下の閉塞又は広範な閉塞部位を有する等外科的治療又は血管内治療が困難で、かつ従来の薬物療法では十分な効果を得られない者
Fontaine分類とは・・・
難治性潰瘍があるのだから、既にⅣは決まっているようなもの
使い方はこうだ。
いわゆる血液透析と同じで、通常の透析回路のダイアライザーをレオカーナにするだけ。
PMXと似ている。
特徴は以下参照
体外循環
返血・終了
【使用上の注意】
患者要因
【禁忌】
末梢血管不全の患者て大概大血管障害も合併していて、ACEi飲んでる人結構いる。。ARBも含まれたら更に多くなるけど、ARBはRASカスケードだけの話(AT1受容体をブロック)でBKには関与しておらず、BKを上昇させない(=咳嗽の副作用も無い)から大丈夫。
【併用注意】
その他の降圧薬ももれなく血圧低下が危惧されるため注意。
▶レオカーナによるBK等による一時的な血管拡張作用が降圧薬による血圧低下を助長するおそれ
血サラサラ系も同様に。。
【その他の注意】
骨もしくは腱の露出を伴う潰瘍・治療対象とする潰瘍に関連する血行再建術が半年以内に複数回実施されている患者には、慎重適用
▶有効性及び安全性は確認されていない
【臨床成績】国内の臨床試験
上記条件で61症例
1クール24回まで治療した結果、初回治療後24週間以内の治癒28症例(45.9%)、紹介治療後48週間以内の治癒32症例(52.5%)
【学会報告】
【診療報酬】
原則として一連につき3月間に限って24回を限度として診療報酬の算定が可能
3月間=12週 24回→2回/週
保険償還価格:91600円
技術料:1680点
まとめ
ASO、CLI患者(non ACE阻害薬)において、3ヶ月間に週2回レオカーナを用いた血液浄化を行うと、LDL-c,Fibが低下し難治性潰瘍が治癒する効果が期待できる。
潰瘍を有する重症化した閉塞性動脈硬化症(Arteriosclerosis Obliterans 以下、ASO)、いわゆる重症下肢虚血(Critical Limb Ischemia: CLI)に対してはバイパス術や血管内治療などによる血行再建術が治療の選択肢となるが、回復せず潰瘍が難治性となった場合は、既存の治療方法では十分な効果が得られず切り落とすしか選択肢はなかった。
下肢の切断につながるような重度の潰瘍の治癒率を評価した治験において、治療開始から24週以内に45.9%の患者の潰瘍が治癒したということで、これまでの半数程度の患者の足が救えるかもしれない。
感想
医療の進歩ってすごい。
幹細胞からなんでも作れるバイオの世界もすごいけど、選択的に吸着するビーズもすばらしい。LDL以外にも不要物質を選択的に吸着していけたらもっと多くの患者が救われるに違いない。。
3M+KCI VAC-ULTAに次ぐ最新陰圧閉鎖療法
PREVENA
2021年3月1日に、保険収載された医療機器
★切開創管理システムを用いてSSI(surgical site infection)の発生を低減
手術切開部閉鎖に対する陰圧閉鎖療法ciNPT(closed incision Negative Pressure Therapy)の主な効果
PICOと同様、単回使用
PREVENA® 型陰圧維持管理装置は、13cmと20cmの専用のドレッシング材
PREVENA® PLUS型陰圧維持管理装置は、任意の長さのドレッシング材用で、充電タイプ
期間が終了すると、自動的に電源が切れ終了する
治療期間は、PREVENA8日間・PREVENA PLUS7日間
ではこれをどんな術後患者にPREVENAを使用すればいいか・・
適応 ◀ これが重要★
PREVENA® 切開創管理システム の保険算定のポイントから説明
① 「 切開創手術部位感染のリスクを低減させる目的」のみで薬事承認されている局所陰圧閉鎖処置用材料であることが必要です。 PREVENA® 切開創管理システム は、条件に該当しています。
② 2022年3月31日までは、手術医療機器等加算の「準用技術料」として算定します。 ● 特定保険医療材料ではなく、手術における技術料の加算(手術医療機器等加算)になります。
● 下記3つを合算して算定します。(合計 5,190点)
区分番号「K938」体外衝撃波消耗性電極加算(3,000点)
区分番号「J003」局所陰圧閉鎖処置「注1」初回加算(1,690点)
区分番号「J003」「注2」持続洗浄加算(500点)
● 体外衝撃波消耗性電極を使用していなくても算定できます。
③ CDC手術創クラスⅢ以上に相当する術後縫合創に対して使用することが必要です。
CDC手術創クラスとは・・・
wound classification
class1:清潔創
清潔創は、全く炎症のない非汚染創である。呼吸器、消化器、生殖器、感染のない尿路は含まれない。さらに、清潔創は一時的に閉創されたものであり、必要に応じて閉鎖式ドレナージによる排液が行われている。非穿通性(鈍的)外傷に対する手術の切開創は、この基準を満たせばこの創分類に含まれる。
class2:準清潔創
準清潔創は、気道・消化管・生殖管・尿路が制御された状態で開けられ、異常な汚染を伴わない手術の創である。具体的には、胆道・虫垂・膣・口腔の手術は、明らかな感染の証拠や手技の破綻が認められなければこの創分類に含まれる。
calss3:汚染創
汚染創は、開放創、新鮮創、偶発的創傷を含む。さらに、清潔操作に大きな破綻を生じた(例:開胸心臓マッサージ)あるいは消化管から大量に液の流出を生じた手術、急性非化膿性炎症を認める手術における切開創がこの創分類に含まれる。
class4:化膿創
化膿創あるいは感染創は、壊死組織の残存する陳旧性外傷、すでに存在する臨床的感染あるいは消化管穿孔を伴う創を含む。この定義は、術後感染を引き起こす病原体が術前よりすでに手術領域に存在していたことを示唆する。
④ 下記の入院管理料のいずれかを算定していることが必要です。
区分番号「A301」 特定集中治療室管理料
区分番号「A301-3」 脳卒中ケアユニット入院医療管理料
区分番号「A301-4」 小児特定集中治療室管理料
区分番号「A302」 新生児特定集中治療室管理料
区分番号「A303」 総合周産期特定集中治療室管理料
⑤ 上記③④を満たした上で、下記に該当するいずれかの患者に対して使用した場合に算定できます。
(イ) BMIが30 以上の肥満症の患者
(ロ) 糖尿病患者のうち、ヘモグロビンA1C(HbA1C)がJDS値で6.6%以上(NGSP値で7.0%以上)の者
(ハ) ステロイド療法を受けている患者
(ニ) 慢性維持透析患者
(ホ) 免疫不全状態にある患者
(ヘ) 低栄養状態にある患者
(ト) 創傷治癒遅延をもたらす皮膚疾患もしくは皮膚の血流障害を有する患者
(チ) 手術の既往がある者に対して、同一部位に再手術を行う患者
もうおわかりだろうが、
③と④のハードルがかなり高い・・・
まとめると・・・
PREVENAを使用すると、手術切開部の創縁を引寄せ、縫合部にかかる張力を減張し、滲出液を管理できSSIを予防できるが、使用するなら大きな病院のICU加算を取ってるような施設において、術後の時点で創環境が悪く、患者背景からも創傷治癒が遅延しそうな人に使用するとのこと
使用上の注意
閉鎖した創部を清潔に保つため、手術閉鎖後直ちにドレッシングを貼付し、治療を開始する。
治療期間は、陰圧維持管理装置が自動的に治療を終了するまでとする。
以下参考資料
切開創SSIに対するNPWT機器の適正使用にかかる提言
一般社団法人 日本外科感染症学会
はじめに 手術部位感染(Surgical Site Infection:以下、 SSI)は頻度の高い医療関連感染の一つであり、手術治療が進歩した現在でも消化器外科系手 術等ではSSIが高率に発生しています。SSI発生率の低い他の診療科領域においても、特定の手術においては時に重篤化をきたし、再手術や 在院日数の延長といった患者負担を強いることがあります。 現在、米国及び欧州においては、SSIリスク低減を図る目的で陰圧創傷治療法(Negative Pressure Wound Therapy:以下、NPWT)が切開創に適用されています。世界保健機関が発行しているSSI予防のためのガイドライン*1 においても、切開創SSIに対して社会的資源に応じ た予防的NPWTが推奨されています。 今般、本邦において、縫合創に対するNPWT機器として、初めて販売名「PICO創傷治療システム」(スミス・アンド・ネフュー株式会 社)及び「PREVENA® 切開創管理システム 」(ケーシーアイ株式会社)が薬事承認されました。当該NPWT 機器の薬事承認上の使用目的 又は効果は、『手術部位感染(Surgical Site Infection: SSI)によるリスクの高い患者の縫合創に対して閉鎖環境を維持し、管理された陰圧を付加し滲出液を除去することで、SSIリスクを軽減することを目的とする。』とされております。これにより本邦においても、SSIリスクの高い縫合創へのNPWT機器が使用可能となりますが、NPWT機器の使用が不要と思われるSSIリスクの低い縫合創への使用は避けなけれ ばなりません。 そのため、当学会は適正使用の観点から、以下に掲げる関連学会のご協力の下、切開創SSIに対するNPWT機器が推奨される適応等につい て、提言として取りまとめました。
関連学会
一般社団法人 日本形成外科学会
一般社団法人 日本消化器外科学会
一般社団法人 日本脳神経外科学会
一般社団法人 日本泌尿器科学会
特定非営利活動法人 日本胸部外科学会
特定非営利活動法人 日本血管外科学会
J003 局所陰圧閉鎖処置(入院)(1日につき)
1 100平方センチメートル未満 1,040点
2 100平方センチメートル以上200平方センチメートル未満 1,060点
3 200平方センチメートル以上 1,100点
注 1 初回の貼付に限り、1にあっては1,690点を、2にあっては2,650点を、3にあっては3,300点を、初回加算として、それぞれ所定点数に 加算する。
2 初回の貼付に限り、持続洗浄を併せて実施した場合は、持続洗浄加算として、500点を所定点数に加算する。 「診酬報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」等の一部改正について (保医発0226第2号令和3年2月26日)
4 別添1の第2章第10 部第3節K938を次に改める。
(1) 消耗性電極とは、1回又は2回以上の使用により消耗し、交換が必要となる電極をいう。なお、この加算は一連の手術について1回の み算定する。
(2) 滲出液を持続的に除去し、切開創手術部位感染のリスクを低減させる目的のみで薬事承認されている局所陰圧閉鎖処置用材料を CDC手術創クラスⅢ以上に相当する術後縫合層に対して使用した場合は、区分番号「K938」体外衝撃波消耗性電極加算及び区分番号 「J003」局所陰圧閉鎖処置(入院)の「1」100 平方センチメートル未満の「注1」初回加算並びに「注2」持続洗浄加算を合算した点数 を準用して算定する。
ア 区分番号「A301」特定集中治療室管理料、区分番号「A301-3」脳卒中ケアユニット入院医療管理料、区分番号「A301-4」小児特定 集中治療室管理料、区分番号「A302」新生児特定集中治療室管理料又は区分番号「A303」総合周産期特定集中治療室管理料を算定する 患者であって、次に掲げる患者に対して使用した場合に限り算定できる。その際、次に掲げる患者のいずれに該当するかを診療報酬明細 書の摘要欄に詳細に記載すること。
(イ) BMIが30 以上の肥満症の患者
(ロ) 糖尿病患者のうち、ヘモグロビンA1C(HbA1C)がJDS値で6.6%以上(NGSP値で7.0%以上)の者
(ハ) ステロイド療法を受けている患者
(ニ) 慢性維持透析患者
(ホ) 免疫不全状態にある患者
(ヘ) 低栄養状態にある患者
(ト) 創傷治癒遅延をもたらす皮膚疾患もしくは皮膚の血流障害を有する患者
(チ) 手術の既往がある者に対して、同一部位に再手術を行う患者
イ ア以外の患者に対して使用する場合には、手術後の切開創手術部位感染のリスクを低減させる目的で使用する局所陰圧閉鎖処置に係 る費用はそれぞれの手術の所定点数に含まれる。
ウ 区分番号「K938」体外衝撃波消耗性電極加算の「注」に定める規定は適用しない。