従来、経口血糖降下薬として使用されているSGLT2阻害薬
●エンパグリフロジン(ジャディアンス)
●イプラグリフロジン(スーグラ)
●ダパグリフロジン(フォシーガ)
●カナグリフロジン(カナグル) 等々・・・
主な作用機序としては、
近位尿細管でのブドウ糖再吸収を抑制し、尿糖排泄を促進し血糖低下作用を発揮
さらに、体重減少、降圧、脂質改善といった効果も認められ、糖尿病治療において多用されている。
★FOR 心不全!!
そして、血糖降下以外にも上記の効果が臨床的に確認されており、心不全にも良さそうとは言われていたが、フォシーガとジャディアンスで証明され、循環器内科医が飛びついた。
まず、フォシーガ 【DAPA-HF試験】
DAPA-HF(Dapagliflozin And Prevention of Adverse-outcomes in Heart Failure)試験は、2型糖尿病合併の有無に関わらず、左室駆出率が低下した(LVEF40%以下)心不全患者4,744例を対象に、フォシーガ(10mg、1日1回) を心不全の標準治療に追加投与した場合の効果を、プラセボと比較評価した国際多施設共同並行群間無作為化二重盲検比較試験です。標準治療との併用で、主要複合評価項目(入院または緊急受診と定義される心不全の悪化、あるいは心血管疾患を原因とする死亡)をプラセボと比べて26%低下させました。また、主要複合評価項目の構成項目である心血管死および心不全の悪化の両方において、全体的にリスクを低下しました。
これによって、フォシーガは、心血管死または心不全による入院を含む心不全の悪化による複合リスクを統計学的に有意に低下させた、初めてのSGLT2阻害剤となった。
続いて、ジャディアンス 【EMPEROR-Reduced試験】
欧州にてHFrEFに対し2021年6月17日に承認され、日本と米国では承認申請中
しかし、このTESTは、LVEF<40%の心不全【heart failure with reduced ejection fraction(HFrEF)】症例に対する話で、
エビデンスの少ないLVEF>50%の心不全【heart failure with preserved ejection fraction(HFpEF)】=拡張障害による心不全 に効果のある薬剤の登場が期待されていた。
そんな中、HFrEFでは遅れたジャディアンス群が、フォシーガよりも早くHFpEFの効果を証明した!
ジャディアンス 【EMPEROR-Preserved試験】
主要評価項目(心血管死亡または心不全による入院の初回イベント)の発生リスクは、エンパグリフロジン投与群で有意に抑制された。詳細は、2021年8月27日 欧州心臓病学会会議(ESC2021)で発表予定
フォシーガ【DELIVER試験】
進行中・・・
これにより、ジャディアンスはHFpEFに対する初めての治療薬となる予定!
★FOR 腎不全
これは、フォシーガ 【DAPA-CKD試験】
第Ⅲ相DAPA-CKD試験においてフォシーガは、2型糖尿病の有無は問わない18歳以上のeGFR 25~75mL/分/1.73m2、尿アルブミンクレアチニン比200~5000mg/gCrのCKDステージ2~4症例を対象に、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi)もしくはアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB) との併用で、腎機能の悪化、末期腎不全 への進行、心血管死または腎不全による死亡のいずれかの発生による複合主要評価項目のリスクを、プラセボと比較して、39%低下させました (絶対リスク減少率 [ARR]=5.3%, p<0.0001)。また、フォシーガは、プラセボと比較して、全死亡の相対リスクを有意に31%低下させました (ARR=2.1%, p=0.0035)
以上よりフォシーガ
(慢性腎臓病の治療を目的とする場合は慢性心不全と同様、5mg/日での有効性は確認されていないため10mgを1日1回投与)は、
●2型糖尿病治療薬
●1型糖尿病治療薬(2019年3月)
に加え、
糖尿病の有無に関わらず、
●HFrEF治療薬(標準治療中)
●CKD治療薬(ACE-I/ARB併用中・末期腎不全or透析施行中以外)
となり、
ジャディアンスは、
●HFrEF治療薬(標準治療中)
●HFpEF治療薬(標準治療中)
となった。
日本腎臓学会理事長の柏原直樹先生
「慢性腎臓病患者さんにおいて、2型糖尿病合併の有無に関わらず、腎不全への移行抑制、心血管イベントおよび全死亡に対するダパグリフロジンの有効性が示されました。慢性腎臓病患者さんを対象としたこれまでの試験の中でも画期的な試験であり、ランドマークとなるものです。今回の承認は日本の多くの慢性腎臓病患者さんにとって大きな希望となります」
■使用上の注意
いずれの適応も作用機序の観点から、腎機能低下症例では効果が得られにくいという点に注意 eGFR>30程度
副作用として、
●シックデイ時の脱水やケトアシドーシス
この点は注意したい。
◆まとめ◆
フォシーガ5mg 糖尿病
フォシーガ10mg 糖尿病+HFrEF+CKD
ジャディアンス10mg 糖尿病
+HFrEF+HFpEF(まだPMDA未記載)
◆おまけ◆
名称の由来(知ると覚えやすい^^)
フォシーガ
患者のため、患者家族のため、医師のためをあらわす「for」と、inhibit glucose absorption(糖の吸収を阻害する)の頭文字「iga」を掛け合わせる(x)ことで、他 の血糖降下薬にはない新たな作用であることを表現
ジャディアンス
Ja(ポジティブ,ドイツ語の”Yes”)と Radiance(輝き)から 2 型糖尿病の患者さんに未来への ポジティブな輝きを与える薬剤という意味
腎臓の近位尿細管には2つのブドウ糖再吸収機構がある。1つは糸球体に近い近位曲尿細管(S1)に存在するSGLT2である。SGLT2はブドウ糖の輸送能が大きく、健常者では糸球体で濾過されたブドウ糖の90%をこの部位で回収している。しかし、SGLT2はブドウ糖に対する親和性が低いため、原尿中のすべてのブドウ糖を回収することはできない。このため、近位直尿細管(S3)の部位まで下ってきた残り10%のブドウ糖はブドウ糖に親和性のより高いSGLT1で全て回収される。SGLT2阻害剤はSGLT2によるブドウ糖の再吸収をブロックすることで、尿糖排泄を促進し、血糖低下作用を発揮する。SGLT2阻害薬は健常者が服用しても50~60g/日のブドウ糖が尿中に排泄される。糖尿病患者では血糖値が高いため原尿中に濾過されるブドウ糖量が多くなっている。また、糖尿病患者では尿細管上皮のSGLT2発現量も増加しているため、ブドウ糖再吸収能が高まっており、糖尿病患者の高血糖を維持する原因の1つになっている。したがって、糖尿病患者ではSGLT2阻害剤の服用によって健常者よりも多くのブドウ糖(約100g/日)が排泄される。SGLT2阻害剤のHbA1c低下効果は平均約1%である。また、経口摂取された糖質の一部が体内で利用されることなく尿中に排泄されるため、カロリーロス効果があり、平均約3kgの体重減少効果が認められる。
■内臓脂肪減少効果
糖尿病患者が内服すると、1日100g/日ブドウ糖排泄
▶400kcal/日のカロリーロス
▶代替エネルギーは内臓脂肪
▶内臓脂肪減少・メタボ改善効果
▶血圧低下効果・脂質改善効果・尿酸低下効果・脂肪肝改善(肝保護効果)
■ケトン体増加作用尾
効率の良いエネルギー基質として注目されているケトン体の増加、心臓保護のメカニズムの1つとして提唱
▶ケトアシドーシスのリスクを高める
▶糖質制限中の症例ではよりケトアシ注意
■血糖低下効果はインスリン作用を介さない
▶単独投与で低血糖を起こす可能性が低い
■血糖依存性で腎機能依存性
血糖コントロールの悪い症例ほど血糖改善効果がより強く現れる
尿糖排泄は糸球体濾過量に依存するため、腎機能が悪くなると効果を発揮できない
▶eGFR<45では血糖改善作用は期待しにくい
■心血管病抑制効果・心不全抑制効果・腎症進行抑制効果
【DAPA Care試験】
フォシーガの心血管、腎、臓器保護作用を評価する一連の臨床プログラム
進行中・・・
【第Ⅲ相DELIVER試験】HFpEF
【第Ⅲ相DAPA-MI試験】AMI or 心臓発作発症後の非2型糖尿病患者