離島と都会を行き来する診療看護師のブログ

primary care NPとして離島での道を開拓する

特定行為講座 【糖質輸液又は電解質輸液の投与の調整】【脱水症状に対する輸液による補正】血管内脱水と細胞内脱水

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脱水の鑑別として、どこの水が足りてないかを考え、どこに水を補充するかを考えることが重要

低Na血症の鑑別にも重要だが、これが難しい。

 

まずは、血管内脱水

いわゆる細胞外液量減少

 

所見としては、

  • 頻脈
  • Capillary refill timeの延長
  • ツルゴールの低下
  • 口腔・腋窩の乾燥
  • 尿量低下

 

などが挙げられる。

 

CRTは2秒以上で延長

ツルゴールは、成人で2秒以上、高齢者で5秒以上で低下

 正確には間質液の減少▶︎血管内脱水もある

 口腔・腋窩の乾燥も正確には間質液の減少

 

そして、細胞内脱水

細胞内液は、間質の浸透圧(正確には張度)によって変動

 

浸透圧高▶︎細胞の水が間質に移動▶︎細胞内脱水

浸透圧低▶︎間質から細胞に水移動▶︎細胞浮腫

 

間質の浸透圧を測定することはできないので、血液の浸透圧(正確には血漿浸透圧)で代用する

 間質と血管は水の出入りが自由なので浸透圧はほぼ同じ

 

脱水や低Na血症を見た時には、必ず浸透圧!!チェック!

 

 

mEq/L 電解質の単位について はこちら 

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浸透圧 はこちら

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張度 はこちら

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特定行為講座 【糖質輸液又は電解質輸液の投与の調整】【脱水症状に対する輸液による補正】mEq/L 電解質の単位について

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モル mol

懐かしい響き。説明できる看護師は少ないのではないだろうか?

 

粒子の数を表すmol

1mol=6.0x10の23乗個

 

そして、molに電荷をかけたものがEq(equivalent)

Naは電荷1なので、1mol=1Eq

Caは電荷2なので、1mol=2Eq

 

臨床ではmをつけたmEq(メック)を使うことが多い。

Na+は1mmol=1mEq

Ca2+は1mmol=2mEq

 

mEqをℓで割ると、濃度単位になりmEq/Lとなります。

 

 

血管内脱水と細胞内脱水はこちら

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浸透圧はこちら

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張度はこちら

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炭酸脱水素酵素阻害薬の機序

電解質がわかれば体の中がわかる。

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ということで、利尿薬関連でおさらい。

今回久しぶりに使用した、炭酸脱水素酵素阻害薬の機序から復習。

 

重炭酸イオン[HCO3-]は糸球体で濾過され、そのほぼ全てが近位尿細管で再吸収される。

尿細管腔のHCO3-はそのまま再吸収されるのではなく、細胞の中から分泌(Na/H+交換系)されたH+イオンと反応して炭酸[H2CO3]になる。

炭酸は炭酸脱水素酵素 carbonic anhydrase(CA)の働きで速やかに水とCO2ガスに分解される。

この2つが細胞内にIN

 

細胞内ではこれの反対の作業

水とCO2ガスから炭酸脱水素酵素により炭酸となる

炭酸から【管腔に分泌される】H+イオンと、【血液側の間質へ出て行く】HCO3-が作られる

 

これらにより、管腔内から血液側間質へ重炭酸イオンが再吸収されたことになる

 

なんて回りくどいんだろう。

スッと再吸収してくれ、、

 

ここから薬理学。

近位尿細管の炭酸脱水素酵素を阻害することで、

①水+CO2ガスと炭酸の双方向の変換促進を阻害

②尿細管内細胞内で生成されるH+が減少する

③尿細管のNa/H+交換系において、Naと交換対象のH+が減少するので、交換系が働かなくなる。

④細胞内から尿細管内へのH+排泄の減少と、尿細管内から細胞内へのNa+再吸収減少

⑤Na+再吸収減少▶︎Naは水を引きつける▶︎尿細管に水増加▶︎利尿作用 NaHCO3排泄(Na利尿)

 要は、これでHCO3-の再吸収を阻害

 

細胞内から尿細管内へのH+排泄の減少

▶︎尿細管内でのH+と反応するHCO3-が反応できず、そのままHCO3-の形で排泄

▶︎尿はアルカリ性に、血液は酸性に傾く。

 

効きすぎると、

HCO3-喪失による代謝性アシドーシスを来たす

 

しかし、この副作用を利用できる人が、換気不全に陥っている呼吸性アシドーシスさん

CO2が吐き出せないので、わざと重炭酸イオンを排泄しアシドーシスにすることで、CO2を減らそうと呼吸回数が増えるため(呼吸性代償)頻呼吸にはなるがCO2は減らせる。

※適応症❸肺気腫における呼吸性アシドーシス

 

ただ、NaHCO3排泄も忘れずに。

CO2ばかり気にしていたら、Na排泄によって尿量増加、脱水になっているかも。

 

気をつけたい。

 

 

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インスリン単位量の考え方

スケール指示など人それぞれ単位数の決定方法はあると思うが、指導医に教わった簡便な考え方を紹介。

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基本 インスリン初期量を 0.2~0.5単位/kg/日 と設定

 

60kgの人には、12単位~30単位/kg/日 となる。

低血糖リスクが高い人には、少なめから開始し、リスクが低い人には中等量~多めで開始する。

 

間をとって、まず16単位と設定すると、

その16単位を分割する。

 

超速効型:朝4単位・昼4単位・夕4単位 そして持効型4単位

といった考え方。

 

①まず、上記を基準にばらまいといて

②実際の測定値を診ながら、その前のインスリンを調整する。

 

例えば、上記のインスリンの投与を開始した患者の血糖値が翌日、

 

朝食前 130mg/dl(超速効型4単位)

昼食前 265mg/dl(超速効型4単位)

夕食前 150mg/dl(超速効型4単位)

眠前  170mg/dl(持効型4単位)

 

だったとする。

もちろんどこまでHbA1cを下げたいのか患者背景にもよるが、強化インスリン療法ではなく一般的な高齢者の血糖管理とした場合、

 

昼食前が高いので、朝食前のインスリンを2-4単位増量し朝だけ6単位か8単位にする。

全体的に下げたければ持効型を少しずつ増やす。

 

インスリン分泌能や追加インスリン量などそれぞれ診る点は多々あるが、簡便な方法としてこんな方法もあるそうです。

 

なんとなく雑な感じも否めませんが、指導医曰くこれで低血糖など生じたことはなく、むしろスケール指示でインスリン追加追加となっていると、高血糖低血糖を繰り返し調整する時間が長くなるという感覚だそうです。

 

やってみると『血糖値の勘』が養われてきます。

これくらいで始めると低血糖になってしまう。

これくらいは絶対必要。

論理的に介入することが必須だが、感覚が必要なところがあるのが医療の面白いところ。

 

続いて、インスリンからの卒業☆

インスリンの離脱を考えれるようになる時期は、

『1日総インスリン量 20単位以下』

を目安にすると良い

 

もちろんインスリン分泌能が保たれていればの話し。

Ⅰ型糖尿病やインスリン分泌量が枯渇したⅡ型糖尿病はインスリン完全依存状態なので離脱は無理

完全依存状態かそうでないかを判断するのは、

『Cペプチド(CPR)』で判断できる。

 

『血中インスリン濃度』は、インスリンを投与してしまっている時には自己インスリン(内因性)に注射インスリン(外因性)が影響してしまい使えない。

 

プロインスリン膵臓β細胞で作られ、分泌直前に酵素によって分解されてインスリンとCペプチド(CPR)それぞれ1分子ずつ生成される。

したがって、CPRを測定することによって内因性インスリンのみを推定することができ、インスリン分泌能を推測することができる。

 

インスリン・CPRは食事により増加し、日内変動があり、24時間尿中CPRを測定するとその日に作られたインスリンの総量がわかる。

糖尿病患者では、

『24時間尿中CPRが20μg/日以下』

または

『空腹時血中CPRが0.6ng/mL以下』

であれば、インスリン依存状態と考えられる

 

そうでなければ、インスリンからの卒業ができると見込んで、

まず持効型を残し、BG系やDPP-Ⅳ阻害薬を入れてモニタリングを行う。

持効型が切れるかどうかはその人次第。

 

目標は、ガイドラインに沿ってHbA1cを参考に、許容する随時血糖を設定する

まだ50代だから、厳しめに設定

もう90代だから、ゆるめに設定

 

もちろん、薬物療法だけでは絶対にうまくいかない。

生活習慣病は、『患者指導』ではなく『患者支援』を行い、食事や運動などの具体的なプランを一緒に考えて実行できるようにサポートしていく医療者が重要です。

 

 

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離島の台風事情

台風が来るたび、

 

「災害級の被害」

「次のは本当にやばい」

「命を守る行動を」

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実際に最接近した際は、ボンネットが飛んでいく、雨戸を閉じても隙間風で窓ガラスが割れる、海水面が上昇し浸水する、病院の看板が折れるなど被害は甚大だが、大抵は少しそれて被害はそうでもなかったりする。

ただ前評判が毎度そんな状況だから、

 

離島には【台風避難としての入院】がある。

 

停電したら復旧までも数日かかることが多々あるらしく、在宅で人工呼吸器などの医療機器を使用している患者は、自家発電がある病院に避難入院するのは理解しやすい。

 

しかし、家がボロボロで家にいると生死に関わるから通り過ぎるまで入院するという人が多い。

そして、治療が終了し退院待ちの患者たちも、台風が通り過ぎてから帰ろうかなとなり、退院が延長する。今の台風が通り過ぎてもたて続きに台風が来るから、帰るタイミングを見失ってしまう。

 

これらの理由で、病院は患者で溢れる。

 

実際の健康被害を受けて救急外来を受診する患者も来るし、通常ならヘリ搬送する重症例もヘリも船も出ないからどうにか今いるスタッフだけで乗り切る。自家発電の切り替え時の影響で支障が出るから、CTもMRIも計画停止していて使えない。

消化管穿孔などの緊急手術は年配の院長が請け負い病棟急変は研修医でACLS、自家発電のトラブル時には総出でアンビューするなどして、どうにか院長から研修医が総力を合わせ島の医療を支えている。

 

台風のたびに離島医療を命がけで支えているスタッフに台風慰労金を支給する政策を打ち出す総理大臣はいないだろうか。

特定行為と倫理観

特定行為に限ったことではないが、医療行為を実施するにあたり倫理観を考える時が多々ある。

・自殺による心肺停止蘇生後の家族介護の重さ

・アルコールが止められないアル中患者の繰り返す重症急性膵炎

・施設に帰る度に増悪する褥瘡

などなど挙げていくとキリが無い。

 

NPが大学院で学び、習得した特定行為の技術、、、

これも、倫理観との戦いである。

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・いやがってやまない高齢者の重度褥瘡のデブリードマン

・家族が希望するが本人は望まないPICC管理

・交換の度に抵抗する気管カニューレの交換

 

本当にその人が望んでいるのか、、

その医療行為は本当に必要なのか、、

自分がその行為をする必要があるのか、、

 

やれない時にはやれることがうらやましく思うことがあるが、

 

やれる時にはやる必要があるのか迷う。

 

そしてやらない選択をする必要がある時がある。

 

やれるからこそ、敢えてやらない選択ができる。

 

やれないことをやれるためにNPになったのではなく、

 

やるかやらないか選択することができるようになるためにNPとなった。

 

この方が正しいのかもしれない。

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意外と忘れがち、だけど重要な問診...

Primary careにおいて、アメリカNPも重要な役割の一つ、ワクチン接種

65歳以上の高齢者は、肺炎に罹患する確率が増加する。

そこで重要になるのが、肺炎球菌ワクチンである。

本邦において肺炎球菌に対して、現在2種類接種することができる。

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●23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(商品名:ニューモバックス)

65歳以上の方で、定期接種費用の一部を公費で負担できる

23価とは23種類の血清型に対応しているということ

定期接種(65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳)または 任意接種

5年経つと効果が弱まるので、5年ごとの接種が勧められている。

 

●沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(商品名:プレベナー)

任意接種

ニューモバックスとは違う13種の血清型に対応

免疫記憶がつくので、1生1回接種でOK

元々小児定期ワクチン(生後2か月から6歳未満)が高齢者に適応拡大

成人では筋肉注射

 

守りが増えたほうがいい。この2つを接種することでより予防できるはず

65歳以上

脳梗塞

糖尿病

慢性心疾患

慢性肺疾患

気管支喘息

などの基礎疾患があると、 肺炎にかかるリスクは更に上昇する。

特に気管支喘息肺気腫COPD)、間質性肺炎などの呼吸器疾患をもともと患っている方には、必ず接種を勧めるべきである。プレベナーは現在助成はないが、一生分の投資と説得し生活保護の高齢者にも大体10000円準備していただくよう試みるべきである。

 

①65歳以上の方で定期接種のニューモバックスを既に接種している人

2回目のニューモバックスの前にプレベナーを接種(ニューモバックス接種後1年以上経過して)

プレベナー接種後半年以上経過すれば、 いつでも2回目以降のニューモバックスの接種は可能(2回目のニューモバックスは前回のニューモバックスから5年以上経過して)

 

②65歳以上の方で定期接種のニューモバックスをまだ接種していない人

定期接種年齢(65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳)であれば、 定期接種であるニューモバックスを先に接種。

ニューモバックス接種後1年以上経過したら、プレベナーを接種。

定期接種年齢以外の人は、先にプレベナーを接種。

その後半年以上経過してから、定期接種のニューモバックスを接種。

 

冬季のインフルエンザワクチンの接種もお忘れなく。

 

◆おまけ◆

このままコロナが広がれば、新型コロナウイルスのワクチンも肺炎球菌ワクチンやインフルエンザのワクチン同様の扱いになるのかも。ただ、サイトカインストームやら安全性やらの問題で医療者優先となっても少し様子みたい今日この頃。。

NP・研修医 おすすめ本③ 輸液管理

輸液管理、電解質管理って慣れるまでややこしい

そんな人にはレジデントのためのシリーズがわかりやすいですよー

 

最近発売された

 

レジデントのためのこれだけ輸液

佐藤弘明

 

肺のレントゲンの見方やCTについては、

やさしイイ胸部画像教室

長尾大

 

がわかり良い^ ^

 

 

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