離島ではこれまで、全身麻酔終了後覚醒し抜管後すぐに退室し、その後はHCU入室していたが再クラーレを意識した観察を行っては来なかった。
そもそも再クラーレとはなんなのか?
筋弛緩薬分子が神経筋接合部のニコチン性アセチルコリン受容体の75%を占拠していても、残りの25%の受容体では神経筋伝達が通常通りなされるため筋力は正常化する。すなわち、神経筋接合部はさまざまな生理学的条件下で大きな安全域を持っている。低濃度の筋弛緩薬がある状況下で、呼吸性アシドーシス、マグネシウムまたはアミノグリコシド系抗生物質の投与、または安全域を低下させるその他の要因により、再クラーレ化が起こることがある。ロクロニウム分子は、不十分な用量のスガマデクスを投与された患者では中心コンパートメントにスガマデクスと結合されずに残る。これらのフリーの分子は、末梢コンパートメントに再分布して神経筋接合部に移行し、筋弛緩を引き起こす可能性がある。
すなわち、HCU帰室後に筋弛緩薬の影響で再度呼吸停止を来すということ
それを回避するために設けられるのが、筋弛緩モニタリングであり、
Postanesthesia Care Unit (PACU)である。
海外では、1947年には既に報告が有り、
Anesthesia Study Commission of the Philadelphia County Medical Societyでは、過去11年間手術後24時間以内に起きた死亡例の半数は避けることができたとし、PACUにおける術後看護ケアの改善により少なくともその1/3は防ぎ得たというのだから驚きだ
術後安全性の向上,患者満足度の向上,手術室の効率的運用などへ効果が期待できるPACU
しかし、日本ではPACUを運営する施設が16.1%と少ない。
ある施設では、抜管後15分間、そのまま手術室に待機し、呼吸状態を中心にその他観察してから病棟へ退室するという対策をとっていた。
次の手術が迫る中、5分毎vital signをcheckして、異常があればすぐに対処。
次の手術が迫らない離島手術室。
ゆっくり待つことで患者のメリットが上がり、病棟からの迎えの猶予もでき良いことづくし。
離島で取り入れない手はない。