離島と都会を行き来する診療看護師のブログ

primary care NPとして離島での道を開拓する

#嘔気 食思不振 の鑑別

症例 90代女性 

主訴 食思不振

現病歴

2週間前から食思不振あり、1週間前から食事摂取困難、内服も不可。嘔気持続し来院。便秘傾向、最終排便不明。不眠。

既往歴

骨粗鬆症 認知症 食道裂孔ヘルニア

背景

息子2人と3人暮らし。調理は息子。筆談レベルの難聴。介護申請未。

f:id:nurseandnurse:20200707113652j:image

嘔気と聞いて、消化器疾患のみに頭を持って行ってはいけない。系統的に網羅するための語呂合わせがある。

 

嘔気の鑑別疾患

NAVSEA

N:neuro CNS

頭蓋内病変 脳血管障害

 

A:abdominal

消化管 及び 消化器腹膜

 

V:vestibular

前庭神経刺激

 

S:somatopsychiatric / sympathetic

心身症 精神疾患 交感神経系の亢進

 

E:electrolyte / endocrinologic disorder

電解質異常 内分泌疾患

 

A:addiction

薬物中毒

 

★見逃してはならない疾患★

#頭蓋内病変(脳出血・小脳梗塞髄膜炎

#急性冠症候群

#糖尿病性ケトアシドーシス

腎盂腎炎

#急性虫垂炎

#絞扼性イレウス

#妊娠 子宮外妊娠

#急性緑内障

#薬物中毒

f:id:nurseandnurse:20200707114533j:image

まずは、問診で詳しく

発症時間 期間         ⇒ 2週間前

誘因              ⇒ 特になし

前兆の有無           ⇒ 特になし

症状の変動の有無        ⇒ 特になし

食事内容と摂取後発症までの時間 ⇒ 関係なし

周囲に同症状の有無       ⇒ 特になし

 

随伴症状

発熱 悪寒戦慄  ⇒ なし

腹痛       ⇒ なし

下痢       ⇒ 便秘

頭痛 めまい   ⇒ なし

胸痛 胸部圧迫感 ⇒ なし

眼痛       ⇒ なし

 

既往歴 生活歴

過去の同様イベント       ⇒ なし

高血圧 心・肝・腎・糖尿・内分泌疾患 ⇒ なし

手術歴(特に開腹手術)     ⇒ なし

放射線治療           ⇒ なし

職業歴 (有機溶媒・化学薬品) ⇒ なし

最近の転居 (sick house)   ⇒ なし

海外渡航歴          ⇒ なし

ダイエット          ⇒ なし

肥満 食べ物への嫌悪感    ⇒ なし

長期間の絶食や飢餓      ⇒ なし

 

原因検索・・・

12ch ECG:異常なし

L/d:異常なし

胸腹部CT:食道裂孔ヘルニア 

GIF:食道裂孔ヘルニアのみ

 

この時点では

problem rist

#1食思不振

#2嘔気

#3不眠

#4食道裂孔ヘルニア

#5介護保険未申請

 

#1食思不振

#2嘔気

数年前に食道裂孔ヘルニアを指摘され、PPI内服されていた。内視鏡でも上部消化管に悪性腫瘍含め嘔気の原因となるものは指摘し得ず。

 

#3不眠

入院中の睡眠状況確認から

 

#4食道裂孔ヘルニア

PPIは継続

 

#5介護保険未申請

自宅退院希望。介護申請を行い、在宅調整につなげる。

 

⇒次に頭蓋内病変、循環器疾患のスクリーニングで頭部CT.MRI、心エコー検査を予定。

まずは、外液の補液と明日以降維持液の補液をしつつ、症状の変化を観察。

 

答えは次回。。

 

#嘔気 食思不振 の鑑別 続き はこちら

こちら

 

 

 

 

 

ラクナ アテローム血栓性 心原性

脳梗塞の分類について

 

僕もそうだったが、この3つ。

理解しているようで、理解できていない。

 

なので、《回診でサラッと答えれるように》まとめました。

f:id:nurseandnurse:20200705094937j:image

ラクナ梗塞】

小さい血管(穿通枝)が梗塞

 

【アテローム血栓脳梗塞

太い血管が動脈硬化で閉塞・・・pattern 1

狭窄部位がショックや貧血で血流低下・・・pattern 2

プラークが破裂して末梢へ飛んでいく・・・pattern 3

 (いわゆるA to A)

 

【心原性脳塞栓症】

不整脈により血栓が飛んできた

 

上2つは抗血小板薬、一番下は抗凝固薬。

そういう話しではない。

 

ここで重要なのは、血栓性か、塞栓性か。

 

血栓性と塞栓性の違い★

血栓

時間をかけ徐々に狭窄、閉塞へと至るため、その時間に主に“皮質”を守るため、側副血行路(いわゆるコラテ:collateral circulation)が発達。

 

塞栓性(いわゆるエンボリ:Embolism)

こっちはコラテ作る時間なし!

 

ラクナ・アテロームのpattern 1+2 は、皮質症状が出にくい。

 こうなることを予測して、もうバイパス済だから

 

⇒アテロームのpattern 3と心原性は、がっつり皮質症状(OUT)

 こんなことになるとは。。。

 

じわじわつまるか、一瞬でつまるか が重要

 

 

皮質症状を調べてみた。wikipedia先生

 皮質症状とは、大脳皮質が傷害された場合に起こる症状である。脳の機能は局在化しているためこのような症候になると理解されている。

 前頭葉障害

精神障害、原始反射、運動失調、錐体路症状、運動失語を前頭葉徴候という。・・・

 頭頂葉障害

複合感覚障害が有名。二点識別覚。・・・

 優位半球の各回障害・・・

 側頭葉障害・・・

 後頭葉障害・・・

 

まぁたくさん。

でも重要なのは、最低3つと教えてもらった。

1失語 2意識障害 3半側空間無視

 

これならいける。ここからいこう。

 

脳外科Dr曰く、

ERで対応の脳外科医以外(NP含む)から、相談の際、

「麻痺があります。」

はたいした情報じゃない。

脳梗塞なら麻痺があって当たり前。

それよりも、この3つの皮質症状があるのかないのかが知りたい。

あるならギアを上げてくれるそう。

 

良いことを聞いた。

上手なコンサルトもNPに必要なスキル。

依頼する医師のギアが少しでも上がるように電話しよう。

 

もちろん、発症時間もt-PA血栓回収に必要な大事な情報。

 

あと、脳梗塞に対する武器MRI.

みんなが早くみたいDiffusion!! 拡散強調画像:Diffusion-weighted MRI

2週間以内の脳梗塞は細胞性浮腫のため高信号に。

 

高信号がどこかな~で出なかった場合。

脳梗塞じゃなかった。  ではないらしい。

 

FLAIR!fluid-attenuated inversion-recovery

通常早くて移らない血管だが閉塞血管だと高信号になる。

発症2時間以内の超急性期脳梗塞にはこっち らしい。

 

神経内科は深いなぁ、まだまだ勉強しないと。。

高齢者の THE common disease .

脳梗塞は押さえたい。

 

 

# 膿胸 続き

夜間、主治医が家族に再度連絡してくださり、胸腔穿刺の同意取得。

 

2人の指導医に見守られながら、手厚いフォローとアドバイス

“なんてありがたい“

“ここに来る前は夢のような話“

“特定行為すら大してできなかったのに“

 

エコーで確認。5cmはある。

局麻して肋骨上縁をツンツンつつきながら胸膜を貫通。

出血なし!

思った通り、かなりの膿性胸水。。

滅菌スピッツに分注してくださる指導医たち。

 

・・・「くさっ!」

f:id:nurseandnurse:20200705090557p:image

においを嗅ぐまでもなく、部屋中かなりの悪臭。

1週間くらい風呂には入れなかった人の足の裏。

 

その先生達も、ここまでの胸水は経験がないと。

良い経験をさせてもらった。

 

一通り終えて、手を洗って、

「グラ染しません?」

 

久しぶりや~とかいいながら、この細菌の海に興味津々な様子。

チャッチャッチャと染色して乾かして、気がつけば検査室全体が悪臭。

俺悪くないけど、なんかごめんなさい。

 

顕微鏡を覗く。

 

なんかピンクでぼやけてるなぁ。

指導医がモニターで見ていると、だんだん焦点が合ってきた。

 

「わっ!!!」

 

そこにはおびただしい数の細菌。

 

f:id:nurseandnurse:20200705110010j:image

 

 

いや、密どころでない。

そこはまるで、天の川。

好中球もたくさん出勤中。

倍率を上げていくと更に驚愕。

さらにおびただしい数の細菌。

ピンクでグラム陰性菌

丸っこいのもいれば長めのもいる。

 

Bacteroides fragilis group

嫌気性菌だろう。

 

抗菌薬は現在の抗生剤で増悪はしていないため、薬剤感受性結果を待てると判断。

 

#不明熱の原因がわかった瞬間て気持ちいい。

#だってその人はきっと発熱から解放され快方へと迎えるのだから。

 

 

# 膿胸 はこちら

www.rito-np.com

# 膿胸

#1 膿胸

 

★疑うポイント★

肺炎患者がなかなか解熱しない際に、胸部画像で胸水の存在から疑う。

 

■原因菌■

  • 肺炎球菌
  • 口腔内嫌気性菌
  • ストレプトコッカス・アンギノーサス
  • 黄色ブドウ球菌(術後やインフルエンザ後)
  • 抗酸菌

 

エコーを用いて穿刺できるスペース(1cm以上)あれば、胸腔穿刺を行う。

 

胸水

グラム染色培養

細胞診

ADA     に提出

 

胸水が膿性 悪臭(=嫌気性菌)

滲出性胸水(Light's criteria(ライトの基準))

グラム染色で菌が見える

pH 7未満(pH<7.20では多隔壁性の胸水貯留, 膿胸Riskが高くなる)

 ↓

膿胸 ドレナージを要する胸水!

 

■治療■

抗菌薬とドレナージ

 

抗菌薬

・院内感染症では、MRSA緑膿菌を含んだBroad Spectrumを選択

・嫌気性菌の膿胸ならば胸腔内への抗菌薬投与は不要。

・多隔壁性の場合、ドレナージ不良のことも多い。

・呼吸器外科へコンサルトし胸腔鏡下掻爬術へ。

・胸腔内ウロキナーゼ投与による線溶療法は、出血、外科的対応のタイミングが遅れるリスクあり。

 

☆画像所見☆

Split Pleura Sign (Radiology 2007;243:297-8)

造影CTの所見で、 膿を囲む臓側,、壁側胸膜の肥厚と造影(+)。

Split pleuraは膿胸患者の68%で認められ、胸膜の造影効果増強は86%で認められる。

胸膜の肥厚+造影は滲出性胸水患者の61%で陽性だが、漏出性胸水患者では0%と特異性も高い!

 

 

●実際の症例●

60代男性。統合失調症と外傷性SAHで寝たきり意思疎通困難。発熱しNHCAPとしてVCMにて治療。画像上肺炎像改善も炎症マーカーの上昇、38度台の発熱が持続し、血液培養、胸部CT撮影。抗生剤中止後炎症マーカー増悪、発熱遷延し抗生剤再開、前医が異動のため引き継ぐ。

f:id:nurseandnurse:20200703234405j:image

繰り返す不明熱に対し、まずは、fever work up . ←2wぶり

 

血液培養2set、喀痰培養、尿培養提出。

喀痰、尿培養に関してグラム染色を行い、有意な菌なし。

画像所見にて、半月前のCTを再度見直すと、、、

「ん? 肥厚した臓側胸膜と壁側胸膜 により被包化された胸水。。胸水にしては、液面がflatというよりはもっこり。。ラグビーボール。。。これSplit sign?!?」

 

Split Pleura Sign (Radiology 2007;243:297-8)

造影CTの所見で、 膿を囲む臓側,、壁側胸膜の肥厚と造影(+)

Split pleuraは膿胸患者の68%で認められ、

胸膜の造影効果増強は86%で認められる。

胸膜の肥厚+造影は滲出性胸水患者の61%で陽性だが、漏出性胸水患者では0%と特異性も高い!

 

兎にも角にも穿刺せねば。指導医に報告。キーパーソンに連絡。

胸腔穿刺の同意書を。

 

・・・電話にでない。

f:id:nurseandnurse:20200703235449j:image

うーん、島ならでは。。?

島外のキーパーソンも少なくない。すぐに連絡を取りたくても、すぐに来て欲しくても、不可能!!

 

今日はここまで。残念。。

 

# 膿胸 続き はこちら

www.rito-np.com

 

▼離島NPの独り言▼

自分で異常(今回はCT画像異常)を発見したら、、、

その場で検査オーダー、そして自分で検体採取。ついでに体位変換

そして、自分でグラム染色。そして、すぐに抗菌薬選択、オーダー

薬剤部に取りに行って薬剤溶いてルートとって投与

※赤 看護師以外業務 医師・検査技師

※緑 看護師業務

 

ここで重要なのは、職種をまたぐと、その間―間でタイムロスが生じる(職種間の連絡のタイムラグ+他職種の通常業務+各々の優先順位の変更 等々)。

 

ざっくり

●NP1人で流れ作業でした場合の推定時間・・・60分

●NP不在で医師のオーダー~投与まで・・・半日作業

 

うーーん、 なんてタイムリー\( ˆoˆ )/

f:id:nurseandnurse:20200703234634j:image

あくまで、NPに時間がある日の場合。

医師が暇でも、看護師が暇でも、この流れ作業はしない・できないのでは。。

 

NPのような隙間産業を担う人が増えれば増えるほど、それぞれの職種、また患者に好影響を与えられるはず。。

 

 

肺炎後 ✖ 不明熱 = #膿胸 

 

 

心不全増悪因子 FAILURE

診断のテクニックとして、鑑別疾患の中からそれらしい疾患に絞れて来れた際には、その疾患らしさを追い込むラストスパートをかける。

f:id:nurseandnurse:20200703220134j:image

例えば、心不全らしいと絞れた場合、

増悪因子

を意識した問診を行い、原因検索に当たる。

 

心不全の増悪因子(FAILURE)

 

F:Forgot meds

内服コンプライアンス及び薬剤性心不全(β遮断薬・Ca拮抗薬・NSAIDs)

 

A:Arrythmia / Anemia

不整脈(心房細動など)・貧血

 

I:Infections / Ischemia / Infarction

感染症(心筋炎含む)・虚血(ACSに注意)

 

L:Lifestyle

塩分過剰・ストレス・低栄養(脚気心)

 

U:Upregulators

甲状腺機能異常・妊娠・高血圧

 

R:Rheumatic or other valvular disease

弁膜症

 

E:Embolism

肺塞栓

ラクテート 単位に注目!

f:id:nurseandnurse:20200703215001j:image

 

 

ラクテートは、乳酸の解離で生じる陰イオンで、グルコースの細胞内代謝産物。

正常時は、肝臓で代謝されるため、

成人の正常値は、

 

 0.56~1.39 mmol/L 

 

ざっくり1~2mmol/L

いや、1~2 mmol/L

数字をざっくりさせた分、この単位 mmol/L まで覚えなければならない。

 

嫌気的なエネルギー産生(解糖)時に、骨格筋細胞、赤血球、脳や他の組織で産生される。

ラクテートは細胞内液でピルビン酸から生成され、

乳酸脱水素酵素LDH)がその生成反応を触媒。

 

グルコースからピルビン酸への変換では、解糖系と呼ばれる13の酵素反応が連続して起こる。

通常、十分に酸素化されたミトコンドリアを含む組織細胞では、

ピルビン酸はミトコンドリア中に入り、

クエン酸回路、酸化的リン酸化を通して、

二酸化炭素と水、エネルギー供給体であるアデノシン三リン酸(ATP)に代謝

 

しかし、体が危機的な状況、低酸素状態やミトコンドリアの機能不全が起こると、

生体はATPを産生させるために、仕方なく効率の悪い嫌気性解糖を選択する。

効率の悪い嫌気性解糖のせいで、ATPを強引に生み出した結果、ラクテートという予期せぬものがおまけでついてきて、通常の分解スピードよりも速く蓄積していく。

 

4mmol/Lを越えると死亡率が上昇!!

 

昔は、 mg/dl という単位だったが、国際単位に数年前から変換されている。しかし、昔の測定器を使用しているところは、いまだにmg/dlで測定されるため、単位の変換が必要。

 

mg/dL ×0.11101 = mmol/L

 

mmol/L ×9 = mg/dL

 

なので、先ほどの正常値にmg/dlを並列すると、

1~ mmol/L⇒ 9~18 mg/dL 

 

 

ラクテート “LA” が上がる原因◆

低酸素による嫌気性解糖

  • ショック
  • 重症呼吸器疾患
  • DIC
  • 貧血

ミトコンドリア機能不全による嫌気性解糖

  • 重症肝不全(乳酸の代謝低下)
  • エタノール糖新生異常)
  • 全身けいれん(代謝亢進)
  • 喘息発作(呼吸筋での乳酸産生増加)
  • アルカローシス(糖代謝酵素活性上昇による乳酸産生増加)

 

 

簡単に γ計算 ガンマ計算

 

   0.06✖体重(kg)

流量=  濃度    ✖ γ

 

集中治療領域にいる看護師は、良く耳にするだろうガンマ計算。

麻酔科医が電卓で、鼻唄歌いながら簡単に計算して指示。

でもガンマ計算について調べると、見慣れない単位から長々計算している式を見て挫折。要は患者の前で短時間で計算する方法がわからない。でも大事な計算は一つの方程式のみ。

 

なので、今回は、ガンマ計算について麻酔科医のような秒で計算できる考え方を紹介したい。

有料のガンマ計算アプリを購入する必要もないし、麻酔科医に気を遣いながら相談する必要もない。

ガンマ計算の意味やこのページでわからない詳しい計算方法は、是非他の先生方が説明されているサイトをご覧ください。

 

挫折しやすいガンマ計算の基本式は以下。

1γ=1μg/kg/min

 =0.001mg/kg/min

 =0.06mg/kg/hr

 =0.06×50mg/hr ←体重50kgなら

 =3.0mg/hr

 

今回はこれをすっとばします。

この中身を知ればより理解は深まりますが、正直これに至る過程は気にしなくてもガンマ計算できます!

この式で重要なのは、下から2番目の 0.06 ✖ 体重

 

なんで0.06かは覚えなくても大丈夫ですので、この計算は気がついたら計算してしまうくらい癖づけときましょう。計算するのに必須です!

 

80kgなら 0.06✖80 で4.8!

40kgなら 0.06✖40 で2.4!

50kgなら 0.06✖50 で3.0!

 

この計算が FIRST STEP①

 

次に、その点滴バッグやシリンジで吸った薬液の濃度。

これもたやすい御用。

だいたいDOAやDOBの製剤キット。

こういうやつ↓

 

 

 

キットにしてくれてるのは、だいたい200mlで600mg。

書いてある。

濃度は、1ml当たり何mg入ってるか知りたいので、

mg/mlの順で

600mg/200ml = 3mg/ml

 

ノルアドレナリンとか、ハンプとか、シリンジでいく薬剤は、

その施設毎、その医師毎、やり方が違うからややこしい。

インシデントの元とも言われる。

 

でも大丈夫。

f:id:nurseandnurse:20200704213244j:image

 

ノルアドレナリンは1A1mg.

3A吸えば 3mg.

5A吸えば 5mg.

 

生食で全量を30mlにしようが、50mlにしようが、割れば良い。

3Aを50cc⇒3mg/50ml で 0.06mg/ml

5Aを50cc⇒5mg/50ml で 0.1mg/ml

 

濃度が分かれば、①を濃度で割る。

 

80kg に ノルアドレナリン5A/生食50ml なら

80/0.1 = 800!

これが、SECOND STEP②

 

さあ準備は整った^^

 

どんな医師に どんな指示を出されても 怖くない。

むしろ、医師にドンドン意見してもいいんじゃない?

 

例えば、

「この人(70kg)にノルアド5Aを生食45mlで全量50mlにして0.05γ流して」

はい、①

0.06✖70 = 4.2 !!

次、②

4.2÷0.1 = 42!!

 

これは、この人の1γの流量になってるので、

0.05γなら 42✖0.05 = 2.1!!!!

 

シリンジポンプをくるくる回して、2.1ml/hにすれば完了○

なんてことない。麻酔科医が電卓でちょいちょいっと電卓ぱちぱちしているのはこの計算。

 

逆に、この人2.1ml/h流れてるけど、何γなんだろう?

とか、SOFA スコア を計算している時に、0.1γ以上?以下?

なんて時に、考えるやり方。

 

はい、①

この人の体重は?えーっと、70kgか。0.06✖70だから 4.2①

ノルアドは5A50mlかぁ。

5÷50で0.1だから 4.2÷0.1 でっと 42②

これは、この人の1γの時の流量になっているので、

これを今の流量の2.1ml/hに割ると、

2.1÷42で0.05

ふーん、0.05γか。まだ0.1γ未満やな。 

となる。

 

以上の説明を方程式にすると、

     0.06✖体重(kg)

流量 =   濃度    ✖ γ

 

求めたい部分(流量なのか、γなのか)を⒳にして、方程式に当てはめれば求められる。

 

45kgのおばあちゃんに、ノルアド3A50mlで0.1γいきたいとすると、何ml/h流せばいいのか、、

流量を⒳にして、方程式の右辺を順番に電卓で求める。

     0.06✖体重(kg)

⒳ =   濃度    ✖ γ

 

0.06✖45 ÷ 3÷50 ✖ 0.1γ

 ①     ②

 27  ÷  0.06 ✖ 0.1 = 4.5ml/h

できた。

 

45kgのおばあちゃんに、ノルアド3A50mlで14ml/h流れてる時には、今何γか知りたいので、、

γを⒳にして、

     0.06✖体重(kg)

流量 =   濃度    ✖ ⒳

 

14ml/h = 0.06✖45 ÷ 3÷50 ✖ ⒳

14 = 2.7 ÷ 0.06 ⒳

14 = 45⒳

⒳ = 14/45

  = 0.3111...

0.3γ かぁ 結構多いなぁ。。

とこんな感じ。

 

これができれば、今の流量が何γか一目瞭然

これができれば、目標量が何ml/hか一目瞭然

 

注意

薬剤によって、初期量~上限投与量は決まってるので調べてください。

せっかく計算できても、多いのか少ないのか、わかりません。。

 

例題

「DOA600mg/200mlを50kgの人に3γから初めて」

0.06✖50 (=3) ÷ 600/200(=3) ✖ 3γ ⇒3ml/h

 

そう、50kgの人なら、0.06✖体重が3になる。

DOAやDOBのキット製剤は600mg/200mlだから3になる。

すると3÷3で1になる!

だからいきたいγ数 2γだろうが、3.5γだろうが、1にかけるだけなので、

そのまま、2ml/h 3.5ml/h と単位だけ変換すれば良い。ラッキー☆

 

製剤キットを採用していない施設は、

DOB3Aと生食85mlに入れて使うとこも。

 

DOBアンプル《1A5mlで100mg》を使うと、

DOB3Aは、15mlで300mg

生食85mlに入れると、100mlに300mgとなる。

300mg/100ccの濃度は、3mg/ml 製剤キットと一緒!

このようにわざわざ予め生食100mlから15ml抜く作業は、ガンマ計算をしやすくするテクニックが隠れている。

 

この溶き方をすれば、50kgの人なら、

5γなら 5ml/h !!!

8γなら 8ml/h !!!

3.9γなら 3.9ml/h !!!

計算不要。

 

 

「38kgの人にノルアドレナリン3Aを生食47ccに入れて50ccにして、0.08γいって」

0.06✖38 (=2.28) ÷ 3÷50 (=0.06) ✖ 0.08

=3.04

このように体重が35kgとか40kgとキリが良くない時には、シリンジポンプで設定不能な流量になったりするので、四捨五入することもある。

3ml/h。

 

「80kgの人にhANP1V(1000㎍)を5%TZ50mlに溶いて、0.025γいって」

0.06✖80 (=4.8) ÷ 1mg÷50 (=0.02) ✖ 0.025

=6ml/h

 

「65kgの人にDOBキット600mg/200mlを10ml/h流れてるけど、何γ?」

0.06✖65 (=3.9) ÷ 600÷200 (=3) = 1.3

10÷1.3=7.69 

≒7.7γ

 

「72kgの人にノルアド5Aを生食で50mlにして11ml/h流れてるけど、何γ?」

0.06✖72 (=4.32) ÷ 5÷50 (=0.1) = 43.2

11÷43.2=0.2546

≒0.25γ

 

 

ガンマ計算の仕組みが分からず挫折してしまった人は、まずはこの計算に慣れてガンマ数を計算できるようになってから、なんでこれで求められるんだろうとさかのぼっていくとより理解を深められるかもしれません。

 

 

看護師の臨床推論② 感度・特異度・尤度比

感度・特異度 について紹介します。

 

◆感度◆

ある疾患が本当に存在する場合、検査でどのくらい陽性になるのか

 

◆特異度◆

ある疾患が本当に存在しない場合、検査でどのくらい陰性になるのか

 

人間の体はみんな違ってみんな良いなので、ある病気に罹患し検査を受けた時に、絶対!必ず!反応があるわけではない。

f:id:nurseandnurse:20200629025148j:image

その確率論を説明するのが、これらの言葉である。

 

ある検査の結果(陽性)で、    

   本当に疾患がある場合を   P

ある検査の結果(陰性)だったけど、

   本当は疾患がある場合を   Q

 

こうした場合、 【感度】 は

     P  

    P+Q     となる。

 

即ち、

その検査の 【感度】 とは、その疾患だった人を集めてある検査を行った結果、陽性だった人の割合ということになる。

 

なので、 

『感度が高い検査というのは、その疾患があれば陽性となる確率が高い 』

 という風に考える。

臨床では 【感度】 が高い検査は、 

   『除外診断 に使うことができる。

 

 

次に、特異度

ある検査の結果(陽性)なのに、  

   本当は疾患がない場合を   R

ある検査の結果(陰性)で、    

   本当に疾患がない場合を   S

 

こうした場合、 【特異度】 は

     S  

    R+S     となる。

 

即ち、

その検査の 【特異度】 とは、その疾患でなかった人を集めてある検査を行った結果、本当に陰性だった人の割合ということになる。

 

なので、 

『特異度が高い検査というのは、その疾患がなければ、陰性となる確率が高い 』

 という風に考える。

臨床では 【特異度】 が高い検査は、 

   『確定診断 に使うことができる。

 

ナースのための臨床推論で身につく院内トリアージ にわかりやすい説明が載っていたので、一部参考に。

 

■ある検査をフィジカルアセスメントに置き換えて臨床現場に落とし込むと、、

 

「Aさんに胃管チューブ挿入して。胃泡音確認できたら経管栄養開始して。」

このように指示する医師から指示を受けたことはないだろうか?

 

しかし、胃管チューブを気管に誤挿入し、栄養投与後誤嚥性肺炎で亡くなられた事故を耳にしたことがあるように、胃泡音が聞こえたからといって胃内に留置されていないこともある。

 

研究してみた結果、、

 

胃泡音が聞こえた(陽性)時に、

      本当に胃内に留置された 239人

胃泡音が聞こえなかった(陰性)けど、

      本当は胃内に留置された 31 

  

胃泡音が聞こえた時に胃内に留置された時の 【感度】 は

  239  

 239+31  = 89 ⇒ 感度89%

 

胃泡音が聞こえた(陽性)んだけど、  

    本当は胃内に留置されていない 19人

胃泡音は聞こえなかった(陰性)し、

    本当に胃内に留置されていない 12人 

 

胃泡音が聞こえた時に胃内に留置された時の【特異度】は

  12  

 19+12  = 39 ⇒ 特異度39%

 

よって、

胃泡音が聞かれた時に、89%の確率で胃内に留置されているが、

11%の確率で胃内に留置されていない(T_T)

 

胃内に留置されてるけど胃泡音が聞こえなければ放射線画像で確認するなど別の方法をしたり、やり直したりするだろうが、

胃泡音が聞こえたのに胃内に留置されていないことがあるというのは、見逃せない。

 

胃泡音は胃内に留置されているという証明にはならない。

 

原文はこちら。

Boeykens K, Steeman E, Duysburgh I : Reliability of pH measurement and the auscultatory method to confirm the position of a nasogastric tube. Int J Nurs Stud 51 (11) :1427-1433,2014 

 

 

次回は、尤度比について紹介します。

 

看護師の臨床推論① は こちら

www.rito-np.com

 

看護師の臨床推論③ は こちら

 

 

参考書

 

・ナースのための臨床推論

徳田安春

メディカルフレンド

 

・ナースのための臨床推論で身につく院内トリアージ

伊藤敬介

Gakken

 

・ICNR いま再びのフィジカルアセスメント

Gakken

 

・看護の臨床推論

ケアを決めるプロセスと根拠

Gakken

 

・ジェネラリストのための内科診断リファレンス