離島と都会を行き来する診療看護師のブログ

primary care NPとして離島での道を開拓する

特定行為講座 栄養基礎 経管栄養編 カロリー計算 NPC/N

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たまたま、栄養学の先生と仕事をさせていただく機会がありおもしろかったので、臨床で使える知識を端的にまとめておく。

その先生の口癖は『パーキロ』 なんでもかんでもパーキロパーキロ、パーキロ先生

その先生には、数字が【/kg】で自動的に置き換わる便利な思考回路をしている。

  

人間飢餓状態では、まず肝臓や筋肉に蓄えられているグリコーゲンをエネルギー源として利用する。しかし、その貯蔵量は少なく1日で完売。次に、脂質やタンパク質を分解してエネルギー源として利用する(筋肉喪失スピードはだいたい2kg/週)。

 

必要エネルギー量の計算で代表的なのは、ハリスベネディクト

必要エネルギー量=基礎代謝量(BEE)×活動係数(AF)×障害係数(SF)

基礎エネルギー消費量(BEE)の算出

 Harris-Benedict式

  男性: 13.397×体重kg+4.799×身長cm−5.677×年齢+88.362

  女性: 9.247×体重kg+3.098×身長cm−4.33×年齢+447.593

             これはだいたい電子カルテで計算してくれる

詳細▼参照

 

★NST回診では、パーキロ先生は、摂取カロリーを瞬時にパーキロへ変換する

原則:体重は実体重で。 

   BMI30以上を越える肥満患者は理想体重【身長2乗(m)×22】で

だいたい落としどころは、

25~30kcal/kg/day

 

例:Bw45kg PEGからCZ Hi300kcal/300ccを3回いってます!

  1日900kcalね となるとパーキロ20(kcal/day) ちょっと少ないか

 

次に蛋白質

疾患によって蛋白異化亢進の程度と低タンパク症の程度に応じて決定する

蛋白質はgだから。蛋白質のパーキロはg/kg

だいたい落としどころは、

1.2g/kg/day(内科的疾患)

0.8g/kg/day(寝たきり療養中)

2.0~4.0g/kg/day(褥瘡治療等)

 

例:Bw45kg PEGからCZ Hi300kcal/300ccを3回いってます!

  Q:タンパクは? A:CZ Hiは1日45gです。

  となると、パーキロ1(g/kg/day)か

  褥瘡だっけ? もう少し上げよう。段階的に1.2(g/kg/day)だと54(g/kg/day)か

  あと9gくらい足せる補助食品ない? 

 

タンパクの分解を抑えるために、エネルギー源として十分な糖質の投与が必要だが、タンパク質喪失を抑えるためにはブドウ糖の投与だけでは限界があり、アミノ酸の投与が必要。

タンパク質は筋肉や臓器など身体の構成成分だが、エネルギー源となる糖質や脂質などが不足すると、アミノ酸がエネルギーとして使われ(糖新生)、タンパク合成に利用されない。

アミノ酸やエネルギーの投与量を多くすると、タンパク合成量は増加するが、一定量を超えるとそれ以上投与してもタンパク合成量は増加しない。そのため、エネルギーとアミノ酸をバランス良く投与する必要がある。

 

そこでNPC/N (非タンパクカロリー/窒素比)[non-protein calorie/nitrogen]

 

蛋白質アミノ酸)は1g代謝されるとブドウ糖と同様に4kcalの熱量を発生するが、その投与目的は蛋白合成であり合成に使われた場合はエネルギーにならないためエネルギーとしてカウントしない。

投与したアミノ酸に対して「どのくらいカロリーを与えたか」という指標がNPC/N比。アミノ酸は十分なエネルギーの存在下で本来の蛋白合成に使用されるが、エネルギーが少ない場合、生体はアミノ酸をα ケト酸に転移してクエン酸回路を介してエネルギー合成に使用する。

換言すればNPC/N比は蛋白質を効率よく利用するために窒素1g当たりの必要な非蛋白性のエネルギーということなる。

蛋白質アミノ酸)から窒素量の算出方法だが蛋白質に含まれる窒素量の平均が16%なので、窒素1gは100/16=6.25gの蛋白質に相当する。この 6.25 を窒素係数といい、蛋白質の量を6.25 で割ったものが窒素量となる。

NPC/N 比が小さいときはBUN・アンモニア濃度の上昇、自己蛋白が崩壊し筋肉の崩壊が起こる。

 

パーキロ先生曰く、NPC/Nは 

通常時150-200

褥瘡治癒や栄養改善の攻めモードでは100-120前後

超攻めモードでは80-100前後まで下げれる

腎不全では逆に300-500と上げる

 

例:Q:CZ HiのNPC/Nは? A:100です

  攻めてるねぇ 長期間続けないことだな

 

まずはこのくらいに。

 

 

1日エネルギー消費量(TEE)の算出

TEE=BEE×活動係数×損傷係数(主要なもの一つ)

 基礎エネルギー消費量(BEE)の算出

  男性:66.5+13.75W+5.00H-6.76A

  女性:655.1+9.56W+1.85H-4.68A

  [W:体重(kg)  H:身長(cm) A:年齢]

 

 活動係数

  寝たきり(意識障害、JCS2~3桁):1.0

  寝たきり(覚醒、JCS1桁):1.1

  ベッド上安静:1.2

  ベッドサイドリハビリテーション:1.2~1.4

  ベッド外活動:1.3

  機能訓練室でのリハビリテーション:1.3~2.0

  軽労働:1.5 中~重労働:1.7~2.0

 

 損傷係数

  術後3日間:手術の侵襲度によって1.1~1.8

  骨折:1.1~1.3

  褥瘡:1.1~1.6

  感染症:1.1~1.5

  熱傷:深達度と面積によって1.2~2.0

 

 簡易式

  男性:BEE=12.1×体重+620

  女性:BEE=10.8×体重+620

 

 体重から

  BEE=25kcal/kg×体重

 

memo..

ヒト安静時代謝

骨格筋22% 肝臓21% 脳20% 心臓9% 腎臓8% 脂肪組織4% その他16% 

 

貯蔵エネルギーの主要なものは、グリコーゲン(肝臓・骨格筋)、トリアシルグリセロール(脂肪組織)とタンパク質(骨格筋)。

飢餓状態の動物は、消費エネルギーの大部分を脂肪組織に蓄積したトリアシルグリセロール(TG)に依存する。グリコーゲンの蓄えは、一日分の必要量に満たず、貯蔵糖質のみでは飢餓に対応できない。

脂肪組織のTGから遊離した脂肪酸はそのまま末梢組織で代謝するのは困難。まず、アルブミンに結合して肝臓に運ばれミトコンドリアでβ酸化を受ける。肝臓は、生じた大量のアセチルCoAを原料に水溶性で運搬しやすいケトン体を合成し、末梢組織に配る。最も大量にケトン体を消費するのは骨格筋であり、クエン酸回路の燃料としてエ ネルギーの獲得に利用する。

 

脳は神経細胞の膜電位を維持する為に大量のATPを消費し、酸素消費全体の20%を占め る。脳は通常の条件ではケトン体を消費できず、血糖が主な燃料。

赤血球はミトコンドリアを持たず、ATP合成をすべて解糖系に依存している。 脳と赤血球の機能を保つために、血糖を維持する必要があり、飢餓時には骨格筋の糖原性アミノ酸を消費して糖新生が行われ、血糖が維持される。

 

飢餓時に脂肪組織から遊離した脂肪酸は肝臓に運ばれ、β酸化で生じたアセチルCoAを ケトン体に変換し血流を介して組織に供給しATP合成に用いられる。

肝臓のミトコンドリアで、β酸化で得られた大量のアセチルCoAを三分子分を組み合わ せてHMG-CoAを合成する。

肝臓のミトコンドリアに局在し、HMG-CoAをアセト酢酸とアセチルCoAに開裂する (アルドール・クライゼン混合開裂反応)。

3-ヒドロキシ酪酸ヒドロゲナーゼ (EC 1.1.1.30) 細胞内の酸化還元状態が酸化側に片寄っていると、NADHの酸化を伴って3-ヒドロキシ 酪酸を生ずる。アセト酢酸は非酵素的な脱炭酸反応でアセトンを生ずる。

 

アセト酢酸、3-ヒドロキシ酪酸、アセトンの3つをまとめてケトン体と呼ぶ。

• アセトンは体内で代謝されないので尿中、呼気中に排泄される。(アセトン臭と呼ば れる甘い匂いのもとになる)

パルミチン酸をケトン体に組み換える反応 パルミチン酸の活性化、β酸化により4分子のアセト酢酸が得られる。

 

脂肪分解の調節
ホルモン感受性リパーゼ
脂肪組織からの遊離脂肪酸の供給量をコントロールする。
• グルカゴン、アドレナリンなどホルモン刺激によるPKA活性化でリン酸化を受けて促
進され、AMPKによるリン酸化で抑制される。
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI(CPT-I)
• CPT-I活性は飽食状態で低く、飢餓状態で高い。

• マロニルCoAはCPT-Iの強力な阻害剤である。マロニルCoA濃度は、アセチルCoAカ ルボキシラーゼ(ACAC)活性を反映する。クエン酸はACACの活性化因子、長鎖脂 肪酸は抑制因子。AMPK活性はACACを抑制的に調節しマロニルCoA合成を阻害する ことで間接的にβ酸化を促進しケトン体合成を増加させる。グルカゴンとインスリン による調節を受ける。

細胞内酸化還元状態

NADH/NAD +の比率が低いほど反応は進む。(脂肪を利用するには大量の酸素が必要で あり、細胞内を還元状態に維持する必要がある) ケトン体の利用 飢餓時に血糖の代替エネルギー源として肝外組織(心筋、骨格筋、脳)で利用される。 飢餓状態が続くと脳もケトン体利用に適応する。

アセト酢酸がスクシニルCoAからCoAを転移され(スクシニルCoA 3-オキソ酸CoAトランスフェラーゼの反応)アセトアセチルCoAを生じる。チオラーゼにより2分子のア セチルCoAとなり、クエン酸回路で酸化される。

• スクシニルCoAの高エネルギー結合を消費するため、基質レベルのリン酸化による GTP1分子の合成がロスとなる。

1分子のパルミチン酸(C16)の酸化によるエネルギー収支

β酸化で生じたアセチルCoAをクエン酸回路で完全酸化した場合:合計106ATP

パルミチン酸1分子をケトン体経由で完全に酸化した場合:102ATP

• β酸化を経て4分子のアセト酢酸に変換する :26ATP • 4分子の3-ヒドロキシ酪酸に変換する :16ATP (アセト酢酸を還元する際にNADHを 消費:-2.5 x4 = -10ATP)

• 1分子のアセト酢酸を完全酸化:19ATP(2分子のアセチルCoAを生じる際にGTP 1分子分消費する。10x2 -1)

 

ケトーシス

ケトン体の量が正常より多いもの。高脂肪食、激しい運動後、飢餓で見られる。

β酸化 の亢進に引き続き、 ケトン血症、ケトン尿症(ケトン症)を呈する。 ケトン体(アセト酢酸、3-ヒドロキシ酪酸)は中程度の酸であるため、ケトーシスが持続するとアルカリの予備が欠乏し、ケトアシドーシスとなる。

代謝に障害がある場合(特に1型の糖尿病)重症となる。ケト-シスではアセト酢酸 からアセトンが生じ、呼気中、尿中に排泄され、アセトン臭(甘い匂い)がする。

 

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