当院では、肝臓外科手術前のルーティンとしてPICC挿入を行っている。
ベッドサイドで、、透視室で、、色々院内のルールなどがあるだろうが、当院では
【透視室】で【左尺側皮静脈がfirst choice】がルーティン。
今回、そんな左尺側皮静脈から挿入した時のできごと
70代くらいのおばあちゃん。
ペースメーカーが入ってる。
通常通り、第一関門:血管内アプローチを突破し、左鎖骨下静脈までするするワイヤーを進めていたのだが、、、
第二関門:ZONE Aへの留置で足を取られた。
透視してみると、全然胸骨右縁に進まない!!
ワイヤーをくるくるしたり、鎖骨下静脈辺りまで引き戻し気を取り直して何事もなかったように進め直しても、胸骨左縁で下降しやがる。
LITA?
Aついた?
血管に入ってない?
挙げ句の果てには、あざ笑うかのように、左の内頚に上がる始末。。
二進も三進も(にっちもさっちも)いかず、数日前のCTを見直してみると、、、
左の腕頭静脈が・・・ない!!!???!!!???
左の内頚と左の鎖骨下静脈が合流後、、、
そのまま左内胸静脈みたいに心臓の左縁を下降しapexを周りIVCに合流している?
そんな走行。。
なんじゃそりゃ!?
あとから調べてみると、、、
#左上大静脈遺残 というものがあるらしい
知る人ぞ知る、、というより小児科医や循環器科医には知られてるのかも
いわゆる先天性の奇形らしい
以下、左上大静脈遺残が示唆された冠静脈洞所見 参照
左上大静脈遺残(persistant left superior vena cava: PLSVC)
左総主静脈が正常発達せず, 左内頸静脈と左鎖骨下静脈が合流後,冠静脈洞 (coronary sinus : CS)を介して右房に開口する静脈 である.
PLSVC は全人口の 0. 2%に発症し,両大血管右室起始症など先天性心疾患の約6%に合併するといわれている.一般的に,PLSVC の走行形態から中心静脈カテーテルやスワンガンツカテーテ ル,デバイス治療のリード線を挿入留置する際に注 意を要する程度で,日常生活に大きな問題とはならない.しかし,PLSVC が左房に開口する場合や肺静脈との交通例では右-左短絡を呈し,外科的治療を要する場合があるため,PLSVC が疑われた際には正確に病態を把握する必要がある.
ちょうどこんな感じ↓↓↓
経験した症例も、右前胸部にペースメーカーが入っていた。。
おそらく昔ペースメーカーを入れようとしたときにも、静脈奇形で右心系にカテーテルを挿入できなかったのでは?と悟った。。
左上腕静脈から穿刺した際は、この上大静脈遺残に注意しなければならない。
これを機に、事前のCTやペースメーカーの挿入履歴なんかも意識しようと思った。
そんな教訓を与えてくれた。
透視室でのPICCは移動も場所も確保しなければならず煩雑だが、こういうときには透視下でよかったと思える。
病院異動して、3例目のPICCで経験した、1000人に2人の奇形
先が恐ろしい。。