離島と都会を行き来する診療看護師のブログ

primary care NPとして離島での道を開拓する

貧血の基礎 鉄欠乏性貧血って?

鉄欠乏性貧血 iron deficiency anemia

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概念

鉄欠乏性貧血は、鉄欠乏により骨髄でのHb合成が傷害される小球性低色素性貧血であり、Hb不足を補うために骨髄は過形成になる

日本では男性の2%、妊娠可能女性の25%、原発性貧血の80~90%でみられる

成人男性:Hb13g/dL未満

成人女性:Hb12g/dL未満

 

まず、身体所見から鉄欠らしい所見を知る

・全身倦怠感(Hb8.0g/dl以下でよく出現)

・spoon nail(あまりない)

・口角、口内炎

・舌炎(舌のひりひり感)舌萎縮

・嚥下障害

・異食症(pica) 昔は壁土、今は氷

貧血全般

・皮膚・粘膜蒼白 (眼瞼結膜蒼白があればHb8.0g/dl以下が多い)

・動悸、息切れ(長期貧血で高拍出性心不全

 

部活を休みがちになり氷ばかり食べている娘を心配した母親が、精神的におかしいんじゃないかと連れてきたことがあったが、見事な鉄欠乏性貧血だったことがある

 

血液検査ではこんな感じ

小球性貧血(MCV<80fL)低下を見かけたら、鉄動態をチェック

血清鉄、TIBC、フェリチン

・血清鉄の減少

・TIBC(鉄結合能)の増加

・血清フェリチン値の低下(慢性炎症による貧血では増加)

血液検査は1回のみで診断するのではなく、2~3回繰り返し判定することが大事

臥位で採血をした場合は、座位よりHbやHtc値が4~10%低下するらしい

 

 

代謝の流れ

 トランスフェリン(Tf):鉄輸送蛋白

 血清鉄(Fe):Tfと結合した鉄

 フェリチン:貯蔵鉄

 TIBC:総鉄結合能

 UIBC:不飽和鉄結合能

 TSAT:トランスフェリン飽和度

《トランスフェリンをよくトラックやタクシーに例える》

トランスフェリン→鉄を運ぶタクシー

タクシー全体の台数→TIBC

空車中のタクシー→UIBC

鉄を乗せてる乗車中のタクシー→血清鉄(Fe)

TIBC=UIBC+Fe

 

乗車中のタクシーの割合→トランスフェリン飽和度TSAT

TSAT=Fe÷TIBC×100(%)

 

食事で摂取した鉄は約1mg/日十二指腸で吸収される

(汗や上皮の脱落で約1mg喪失している)

吸収された鉄はトランスフェリンと結合して血清鉄になる

血清鉄(Fe)は、TIBCの1/3程度

つまり、通常タクシーは1/3くらいしか利用されてないってこと

 

鉄欠乏性貧血のメカニズム

鉄が欠乏→フェリチン、貯蔵鉄低下→血清鉄低下→骨髄への鉄供給低下→Hb,Ht低下

 

鉄が不足するとトランスフェリンの産生を増やしてトランスフェリンと鉄が結合しやすい状態を作ろうと頑張る。TIBCはトランスフェリンの量との相関性があるとされ、鉄欠乏性貧血では増加する。

 

よって

まず、①血清フェリチン値の低下

②骨髄可染鉄の低下

となる。更に、

TIBCの増加 血清鉄の減少を認める

 

鉄欠乏性貧血の診断基準

■鉄剤の適正使用による貧血治療指針 改訂(第3版)2015

フェリチン低値(<12ng/mL)

血清鉄低下(<40㎍/dL)

TIBC上昇(≧360㎍/dL)

 

■内科診療フローチャートでは、

MCV<70fL

フェリチン<20ng/dL

で診断可能

 

■K/DOQI 2006

■European renal best practice 2008

TSAT< 20%

 

 

治療

原因疾患の治療と鉄剤の補充

鉄剤は基本的に経口投与

 

【鉄欠乏性貧血における出血源の評価】

鉄剤を入れるだけでなく、必ず原因検索

《妊娠可能年齢の鉄欠乏性貧血》

・月経過多や不正性器出血→婦人科診察

・通常悪性腫瘍の検査は不要

・消化管症状や体重減少、40歳以上で第一度近親に大腸癌の家族歴があれば内視鏡評価

 

《男性とその他女性》

全例上下部消化管内視鏡検査

 

★point★

治療目標は、血清フェリチンが正常化するまで

(血清鉄が十分量になった後貯蔵鉄が上昇するため)

数日で網状赤血球の増加→UIBCは約2ヶ月後に基準値に

通常鉄剤投与により急激に貧血が改善

鉄剤投与を2週間以上継続しても改善しない場合は、ACDなど診断を見直す

胃切除例でも鉄剤有効(十二指腸・空腸上部で主に吸収されるため)

経口鉄剤が無効時、副作用で続行不可、早期貧血改善したい(出産や待機手術)→静注鉄剤

静注鉄剤はショックやアレルギー、鉄過剰症(ヘモクロマトーシス)に注意

ヘモクロマトーシスは実質細胞(組織の主要な機能を担う細胞 例:肝細胞)に鉄が沈着し、ヘモジデローシス(ヘモジデリン沈着症)はマクロファージ(白血球の一種でウイルス・細菌やがん細胞などを食べる細胞)に鉄が沈着した状態を指している。しかし、どちらの細胞に最初に沈着しても、最終的には両方の細胞に鉄が沈着し、結果的に鉄過剰による症状が出て同様の病態となるため、現在ではヘモジデローシス(ヘモジデリン沈着症)という言葉は使われていない。

出血による貧血では、鉄欠乏が明らかでなくても鉄剤の投与で貧血の改善は早くなる

Hb値が改善した後、3ヶ月間継続し、フェリチンの改善後に終了する

終了後は再度鉄欠乏にならないか定期的にフォロー

 

副作用

DIでは、100-200mg/日を推奨しているが、消化器症状を代表とする副作用で継続できない患者も多い

25-50mg/日で眠前1回投与で開始でもいい

(多く投与しても吸収量が増えるわけではない)

隔日投与の方が吸収率は上昇→副作用が強い症例に隔日投与

 

 

 

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