離島と都会を行き来する診療看護師のブログ

primary care NPとして離島での道を開拓する

創傷manegementとしての破傷風予防のまとめ

ICU勤務している際に、3例ほど破傷風患者を経験したことがあるが、がちがちに硬直し動けず自発呼吸もままならずとても痛々しい印象が残っている。

世界で年間100万人が発症し、30万-50万人が死亡し、日本では毎年100例ほどの報告があるらしい。地震津波などの自然災害の後に増加する傾向にあるらしい。

 

破傷風・・・

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破傷風(tetanus)は、Clostridium tetani破傷風菌)が産生する神経毒素(tetanospasmin)による神経疾患である。Clostridium tetaniは、偏性嫌気性グラム陽性有芽胞桿菌であり、芽胞の状態で土壌などの環境に広く分布する。Clostridium tetaniは創傷から侵入し、嫌気状態の創傷部で発芽・増殖し、毒素を産生する。Clostridium tetaniの産生する神経毒素をコードする遺伝子は、細菌のプラスミド上にある。本毒素は、創部で産生された後、血行性およびリンパ行性に末梢神経終末に到達、末梢神経軸内を逆行性に移動して、シナプス前抑制神経終末で、抑制性神経伝達を減少させる。その結果、脱抑制された(disinhibited)、末梢運動神経、脳神経、交感神経が過活動(hyperactive)となり、破傷風の臨床症状を引き起こす。

潜伏期間 3日-3週間(通常1週間程度が多い)

受傷部位が中枢神経から遠いほど潜伏期間は長くなるとされている。

病期はⅠ-Ⅳ期に分けられ、通常4-6週間続く。

Ⅰ期: 典型的な症状として、歯が噛み合わされた状態で口を開けにくくなる開口障害がある。開口障害は半分以上の症例で出現するが、頭部や局所の症状にとどまることもある。自律神経の亢進症状もよくみられ、早期症状としてイライラや、落ち着きのなさ、発汗や頻脈などがある。

Ⅱ期: 開口障害の程度が徐々に強くなり、あたかも苦笑いするような痙笑(ひきつり笑い)がみられるようになる。

Ⅲ期: 頸部から背筋の筋肉に緊張が拡大し、頸部の硬直や背部の強直をきたして発作的に強直性痙攣を生じ始める。大きな音や接触、光などの感覚刺激によって、時に激烈な筋痙攣が惹起される。全般性の収縮が起こると無呼吸になり、上肢は外転、下肢は伸展し、こぶしをにぎり、背を反らしたような姿になる(後弓反張)。意識障害はなく、強い筋収縮が生じると痛みが伴う。腱反射の亢進やバビンスキー反射などの病的反射も認める。

Ⅳ期: 諸症状が時間経過とともに次第に軽快していく。

 

こうならないためにも、予防が重要!

せめて外来受診してくれた外傷患者さんには、傷の処置をするだけでなく破傷風予防も忘れずに行いたい。

 

創傷処置(wound management)としての破傷風予防(フローチャート参照)

 

 

1) 創傷部の状態を確認する。

土壌などに汚染された創部、壊死組織が認められる創部、凍傷、火傷、挫滅、剥離などによる創部では破傷風発症のリスクが高い。

2) 創部を洗浄し、泥や異物等を取り除き、壊死組織のデブリドマンを行う。

3) 沈降破傷風トキソイドを含むワクチンの接種歴を調べ、沈降破傷風トキソイドの接種を行うかどうか判断する。

ワクチン歴不明の場合と1960年以前の人は第一期の定期接種が始まっていないから破傷風予防は未接種として扱う。

① 創傷部の状態から破傷風発症のリスクが低いと判断された場合

1. 沈降破傷風トキソイド(を含むワクチン)の第1期初回免疫3回接種が完了しており、最後の接種から10年経過していないのであれば、血中抗体価が感染防御レベル以上と考えられるため、今回の外傷のためにワクチン接種は必要とされていない。

2. 沈降破傷風トキソイド(を含むワクチン)の第1期初回免疫3回接種が完了していても、最後の接種から10年以上経過している場合は、1回の沈降破傷風トキソイドの接種が推奨される。

3. ワクチン未接種あるいは接種歴不明の場合は、積極的なワクチン接種が推奨される。

② 創傷部の状態から破傷風発症のリスクが高いと判断された場合

1. 沈降破傷風トキソイド(を含むワクチン)の第1期初回免疫3回接種が完了しており、最後の接種から、5年以上経過していないのであれば、今回の外傷のためにワクチン接種は必要とされていない。

2. 沈降破傷風トキソイド(を含むワクチン)の第1期初回免疫3回接種が完了していても、最後の接種から、5年以上経過していた場合は、沈降破傷風トキソイドの接種を1回行う。

3. 第1期初回免疫3回接種を完了していないか、ワクチン歴不明の場合は、沈降破傷風トキソイドを3~8週の間隔で2回接種し、本初回免疫終了後6~18か月後の間に1回の追加接種を行う。接種歴不明の場合、ワクチン接種を忘れている可能性があり、接種医が、接種の必要性および起こりうる副反応について十分に説明する必要がある。

4) 抗破傷風免疫グロブリン(TIG)

① 創傷部の状態から破傷風発症のリスクが高いと判断され、第1期初回免疫3回接種を完了していないか、ワクチン歴不明の場合は、抗破傷風免疫グロブリン(TIG)を使用する。

② 創傷処置の際の破傷風予防には、250 IUのTIGが使用される。

重篤な免疫不全者であれば、沈降破傷風トキソイド(を含むワクチン)接種歴とは関係なく、TIGを使用する。

5) 創傷部の観察を続け、感染兆候があれば治療が必要となるが、破傷風予防のために予防的抗菌薬使用は不要である。

 

★point★

  • 汚染があれば破傷風予防したくなるが、汚染しているしていないにかかわらず傷があれば破傷風を考えなければならない
  • 破傷風予防を3回接種していない、もしくはわからない人には、これから3回接種しなければならない
  • 汚染創でも第1期免疫3回完了していれば、打っても1回でいい

 

創傷ケアは苦手な医師が多いので、NPの活躍できる分野になると思っている。

国立感染症研究所HP参考

フローチャートもあります。

www.niid.go.jp

 

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