離島と都会を行き来する診療看護師のブログ

primary care NPとして離島での道を開拓する

『日本看護協会主催 第3回NP教育課程修了者の交流会』に参加して個人的感想

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他団体、医師や他医療職になかなか正しく伝わらない我々診療看護師制度だが、看護職にもまだまだ馴染みがない上に、診療看護師自らが何をして何をしてはいけないかよく理解していない。自分たちが分からなければ、他職種は理解できなくて当然だ。

 

そもそも、海外のNurse practitioner創設を目指して動き出した結果、

現在、

・日本NP教育大学院協議会(JONPF)の認定→診療看護師(NP)

・日本看護系大学協議会(JANPU)の認定→JANPU-ナースプラクティショナー

と2団体の制度がある。

(JANPUが既に開始してるJONPFのNP制度では腑に落ちなかったため)

これがややこしい点①

 

それよりも、海外のNurse practitioner創設を目指して動き出したものの、医師会の反対などにより実現できず至った課題。

所属団体名である

『一般社団法人日本NP教育大学院協議会』

『日本NP学会』

そして、日本NP教育大学院協議会が用いる『診療看護師(NP)』

これらに含まれる【NP】という略語は、言わずもがな

Nurse practitioner】に他ならない。

 

だが正確に言うと、現行法では日本には海外のように、医師の指示を受けずに一定レベルの診断や治療などを行うことができる公的資格(Nurse practitionerは存在していない。

そのため、診療看護師(NP)は、分類で言うところの『NP教育課程修了者』となる。

ナースプラクティショナーといってしまうと海外のNurse practitionerと誤解されてしまうため、日本NP教育大学院協議会は当初『ナースプラクティショナー(NP)』から言い換え、『診療看護師(NP)』とした。

診療看護師(NP)は、NPだがナースプラクティショナーはないのだ。

 

しかし、看護協会を始め、医師の働き方改革での流れや(外科学会、麻酔科学会、皮膚科学会、精神神経学会、医学放射線学会、救急医学会、脳神経外科学会)の7医学会の医師達が、日本でもNurse practitionerの誕生を要望している。

 

そのため、要望する段階なので、厚生労働省にはナースプラクティショナー(仮称)制度と括弧書きをしなければならない始末。

これがややこしい点②

 

こんなこと、他職種おろか看護師ですら理解できているはずがない。

認定看護師やMEなど現在では当たり前の資格も創設当時はこのような状況だったのだろうか。

 

そして、看護師の特定行為研修制度

診療看護師(NP)制度設計において、どこまでの医行為を実施することを認めるか厚労省で話し合った結果、300等の医行為から38行為に厳選された。そして、その38行為を特定行為といい、それを行うことができる看護師を養成するために開設された研修制度が特定行為研修。それまでに既に認定されている診療看護師(NP)は自動的に全ての特定行為をできるということとなり、その後の診療看護師養成課程には特定行為研修が付加される形となった。

 

そのため、特定行為を行うことができる看護師は、現在

診療看護師(NP)と

特定行為研修を修了した看護師 (通称:特定看護師)

これで、診療看護師と特定看護師という言葉が誕生してしまった。

この2つの大きな違いは、大学院教育を修了しているかどうか

診療看護師は、大学院修士課程で行うため、卒業すれば修士の看護師

特定行為研修は、あくまで研修

 

日本NP学会は、この特定看護師との差別化を毎年強く謳う。

●特定行為研修制度はあくまで限定した特定行為パッケージ(例:在宅で必要な瘻孔管理や脱水補正に関連した5行為とか集中治療で必要な人工呼吸に関連した7行為等)を取得しただけで、診療看護師のような修士課程で学ぶ薬理学、病態生理学、フィジカルアセスメントなどは課していないため、診療看護師の方が優れているといわんばかり。

 

学会に加勢するとすれば、研修期間(最短6ヶ月~)も修士課程の(最短2年間)の方が長いし、診療看護師は特定行為を学ぶために就学するわけではなく、看護師教育よりも更に専門的な医学教育を習得したいがために進学するため、特定行為はあくまでおまけ的な要素が大きい(実際大学院で絶対的医行為がしたいからと言っていた学生は指導対象)。そして、特定行為研修は研修制度として基本的には全員合格できるような施設側の支援などがあるところもあり、同期半数留年や自主退学を求められた修士課程とはほど遠い印象。

 

しかし、特定行為研修も短期間とはいえ、特定行為を行うために関連した臨床推論は必須科目となっているし、そこまで差別化を重要視すると、診療看護師は、特定看護師よりも長時間多くを学んでいて偉い。その辺の特定看護師と一緒にしてもらっては困るといった印象になりかねず、どうかと思う。

 

そして、その結果、医師が正しく理解しておらず、現行法以上の役割を診療看護師(NP)に与えている点。

現行法の大原則

医師法第17条 『医師でなければ、医業をしてはならない。』

医師法第20条 『医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方箋を交付し、自ら出産に~~~してはならない』

 

そもそも、多忙な医師は電話で入院患者の異常を伝えられても、優先度や重症度が低いと判断した際は、診察することなく処方し薬剤投与するといったことは日常茶飯事である。

その手薄な場所を得意とする診療看護師(NP)は、自らその隙間に入り込み活躍することが多いが、本来であれば医師がすること。それを医師はありがたい(この診療看護師(NP)なら任せられる)と思って、医師が診察することなく診療看護師が診断や処方することは、代行処置であってもしてはいけない範疇となる。

これも、実際のところ、2次救急外来やホスピタリストとして病棟管理を任されている診療看護師(NP)は、全ての相談症例を事前に医師に相談し(医師から診療看護師の対象患者という設定してもらい)、自ら得た臨床推論を医師に伝えてから治療に当たるという、現行法にはまった働き方をしているのだろうか。ある程度医師との信頼関係が構築した診療看護師なら、医師もいちいち診療看護師への許可や記録を残さず対応しているのではないだろうか。

 

色々言いたいこと、思ったことを書いてきたが、結局の所、医師に理解してもらえないと正しい仕事ができないし、患者に理解してもらわないと大衆の理解を得ることはできない。

 

そのためにも、関連職種は手を取り合って協力すべきだし、資格制度も名称もなるべくわかりやすくするべきだろう。

 

我々の資格制度における問題点を理解していただけただろうか。

どうか統一化に向けた成長途中と思って、暖かく見守ってもらいたい。

そして親団体からは、間違いや罰則、上下関係などをアピールするよりも、現場で働く我々をもっと支援していただきたい。