離島と都会を行き来する診療看護師のブログ

primary care NPとして離島での道を開拓する

離島の台風事情

台風が来るたび、

 

「災害級の被害」

「次のは本当にやばい」

「命を守る行動を」

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実際に最接近した際は、ボンネットが飛んでいく、雨戸を閉じても隙間風で窓ガラスが割れる、海水面が上昇し浸水する、病院の看板が折れるなど被害は甚大だが、大抵は少しそれて被害はそうでもなかったりする。

ただ前評判が毎度そんな状況だから、

 

離島には【台風避難としての入院】がある。

 

停電したら復旧までも数日かかることが多々あるらしく、在宅で人工呼吸器などの医療機器を使用している患者は、自家発電がある病院に避難入院するのは理解しやすい。

 

しかし、家がボロボロで家にいると生死に関わるから通り過ぎるまで入院するという人が多い。

そして、治療が終了し退院待ちの患者たちも、台風が通り過ぎてから帰ろうかなとなり、退院が延長する。今の台風が通り過ぎてもたて続きに台風が来るから、帰るタイミングを見失ってしまう。

 

これらの理由で、病院は患者で溢れる。

 

実際の健康被害を受けて救急外来を受診する患者も来るし、通常ならヘリ搬送する重症例もヘリも船も出ないからどうにか今いるスタッフだけで乗り切る。自家発電の切り替え時の影響で支障が出るから、CTもMRIも計画停止していて使えない。

消化管穿孔などの緊急手術は年配の院長が請け負い病棟急変は研修医でACLS、自家発電のトラブル時には総出でアンビューするなどして、どうにか院長から研修医が総力を合わせ島の医療を支えている。

 

台風のたびに離島医療を命がけで支えているスタッフに台風慰労金を支給する政策を打ち出す総理大臣はいないだろうか。

特定行為と倫理観

特定行為に限ったことではないが、医療行為を実施するにあたり倫理観を考える時が多々ある。

・自殺による心肺停止蘇生後の家族介護の重さ

・アルコールが止められないアル中患者の繰り返す重症急性膵炎

・施設に帰る度に増悪する褥瘡

などなど挙げていくとキリが無い。

 

NPが大学院で学び、習得した特定行為の技術、、、

これも、倫理観との戦いである。

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・いやがってやまない高齢者の重度褥瘡のデブリードマン

・家族が希望するが本人は望まないPICC管理

・交換の度に抵抗する気管カニューレの交換

 

本当にその人が望んでいるのか、、

その医療行為は本当に必要なのか、、

自分がその行為をする必要があるのか、、

 

やれない時にはやれることがうらやましく思うことがあるが、

 

やれる時にはやる必要があるのか迷う。

 

そしてやらない選択をする必要がある時がある。

 

やれるからこそ、敢えてやらない選択ができる。

 

やれないことをやれるためにNPになったのではなく、

 

やるかやらないか選択することができるようになるためにNPとなった。

 

この方が正しいのかもしれない。

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意外と忘れがち、だけど重要な問診...

Primary careにおいて、アメリカNPも重要な役割の一つ、ワクチン接種

65歳以上の高齢者は、肺炎に罹患する確率が増加する。

そこで重要になるのが、肺炎球菌ワクチンである。

本邦において肺炎球菌に対して、現在2種類接種することができる。

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●23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(商品名:ニューモバックス)

65歳以上の方で、定期接種費用の一部を公費で負担できる

23価とは23種類の血清型に対応しているということ

定期接種(65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳)または 任意接種

5年経つと効果が弱まるので、5年ごとの接種が勧められている。

 

●沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(商品名:プレベナー)

任意接種

ニューモバックスとは違う13種の血清型に対応

免疫記憶がつくので、1生1回接種でOK

元々小児定期ワクチン(生後2か月から6歳未満)が高齢者に適応拡大

成人では筋肉注射

 

守りが増えたほうがいい。この2つを接種することでより予防できるはず

65歳以上

脳梗塞

糖尿病

慢性心疾患

慢性肺疾患

気管支喘息

などの基礎疾患があると、 肺炎にかかるリスクは更に上昇する。

特に気管支喘息肺気腫COPD)、間質性肺炎などの呼吸器疾患をもともと患っている方には、必ず接種を勧めるべきである。プレベナーは現在助成はないが、一生分の投資と説得し生活保護の高齢者にも大体10000円準備していただくよう試みるべきである。

 

①65歳以上の方で定期接種のニューモバックスを既に接種している人

2回目のニューモバックスの前にプレベナーを接種(ニューモバックス接種後1年以上経過して)

プレベナー接種後半年以上経過すれば、 いつでも2回目以降のニューモバックスの接種は可能(2回目のニューモバックスは前回のニューモバックスから5年以上経過して)

 

②65歳以上の方で定期接種のニューモバックスをまだ接種していない人

定期接種年齢(65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳)であれば、 定期接種であるニューモバックスを先に接種。

ニューモバックス接種後1年以上経過したら、プレベナーを接種。

定期接種年齢以外の人は、先にプレベナーを接種。

その後半年以上経過してから、定期接種のニューモバックスを接種。

 

冬季のインフルエンザワクチンの接種もお忘れなく。

 

◆おまけ◆

このままコロナが広がれば、新型コロナウイルスのワクチンも肺炎球菌ワクチンやインフルエンザのワクチン同様の扱いになるのかも。ただ、サイトカインストームやら安全性やらの問題で医療者優先となっても少し様子みたい今日この頃。。

NP・研修医 おすすめ本③ 輸液管理

輸液管理、電解質管理って慣れるまでややこしい

そんな人にはレジデントのためのシリーズがわかりやすいですよー

 

最近発売された

 

レジデントのためのこれだけ輸液

佐藤弘明

 

肺のレントゲンの見方やCTについては、

やさしイイ胸部画像教室

長尾大

 

がわかり良い^ ^

 

 

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NP・研修医 おすすめ本② 内科全般

たくさんの医師と仕事をしていくと、それぞれの医師のやり方があるのでよくわからなくなることがある。

 

そのため、まずは通常治療、ガイドラインや診断基準を押さえておきたい。

ホスピタリストのための内科診療フローチャート

専門的対応が求められる疾患の診療の流れとエビデンス 第2版

 

多くの疾患が再診のエビデンスと共に、治療指針までわかりやすく詳細に記載されています。

 

ルーチンを知り、その医師のアレンジに対応を

 

 

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NPおすすめアプリ

primary careを提供するNPとして、初療、病棟、在宅どこを拠点とするにしても、commonな疾患を広く浅くは網羅しておきたいところ。

 

病棟Nsからも研修医からも相談したり相談されたりしながら信頼関係を獲得していく中で、必ず求められる知識は薬物療法

 

薬といっても、抗菌薬、降圧薬、補液類、鎮痛剤等様々あり、その度に辞書を持っていくとかさばるし重たい。

 

スマホタブレットで読める電子書籍も色々あるが、閲覧だけで検索はできないことが多い。

 

今回紹介するのは、M2 plus

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電子書籍の管理アプリだが、このアプリ内に入れた電子書籍の特徴として、検索ワードを入れると全てのページだけでなく全ての本から検索ワードをピックアップしてくれる、串刺し検索ができる!

これが便利!

 

調べたい本からそのワードを調べるだけでなく、別の本の同じワードの部分から追加情報が得られたりする。

 

主に使えるのは、

今日の治療薬とサンフォード感染症治療ガイド

 

特にサンフォードは、タブレットスマホ用に表示を調整してくれていて、本で見るよりも見やすい!

指導医にクイズを出されても、すぐに調べれて答えられる簡便さ!

 

個人的には電子書籍よりも本でパラパラしたいタイプなので、普段は本屋で買うのが好きなんですが、この便利さには敵わない。そして無料。

 

他にも様々な本がアプリ内で購入できるので、個人的には症候別の鑑別疾患を考えるときなど辞書的な使い方をする本はアプリで購入して、読み進めて理解を深める本は実際に購入するように使い分けている。

 

クレアチニンリアランスなど簡単な電卓機能もありがたい。

NPだけでなく、看護師もお試しあれ

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心不全の分類 HFpEFとHFrEFとHFmrEF

高齢者と関わる医療者なら避けては通れない心不全

でも循環器領域を苦手とする看護師も多いのでは、、、

 

今回は、心不全の分類とその治療に関する基礎知識について

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心不全と聞いて連想するEFという2文字

EFとは、正式名称LVEF:left ventricular ejection fraction 左室収縮率である

これは、心臓がどのくらい収縮しているかを超音波検査で計測したもので、文献にもよるが、

50%未満を収縮能の低下

という。

 

心不全と聞いたら、心臓が動いていない

→心臓は収縮するイメージなので収縮していない病気

こう認識する新人Nsは多いだろう

しかし、実際は、

収縮ができていない心不全と拡張ができていない心不全

の2パターンが存在する

 

そして、それを示した略語が、

HFpEF・・・へふぺふ

HFrEF・・・へふれふ

HFmrEF・・・みっどれんじ?

である

 

それぞれ、

HFpEF EF>50%

heart failure with preserved ejection fraction

これは収縮が "preserve" 保たれているが、拡張ができていないために生じた心不全

通称、拡張障害

治療としては、

β遮断薬以外効果的とされる薬物療法はあまり確立されておらず、リスク因子(高血圧とか喫煙とかたくさん)への介入が中心になる

 

HFrEF EF<40%

heart failure with reduced ejection fraction

これは、収縮ができないないために生じた心不全

治療としては、

心不全ではおなじみの、ACE阻害剤/ARB、β遮断薬、アルドステロン拮抗薬が推奨

まずは、

全例ACE-I/ARBを使用

→心血管死亡リスク+入院リスクの軽減効果○

(ACE-IとARBの併用は、副作用リスクが上昇するため、基本的には単剤使用)

(ACE-I(レニベース等○○プリル系)を優先使用し、不耐例に対しARB(オルメテック等○○サルタン系)という考え方)

 

全例β遮断薬を使用

→死亡リスク、心不全増悪リスクを低下

(アーチスト、メインテートの差は特にない)

どれくらい入れればいいか?

→心拍数の低下が死亡リスク軽減効果との相関性有り

目標心拍数

75歳以上・・・68bpm前後

75歳未満・・・60bpm未満 とされる

 

アルドステロン拮抗薬(高K血症がなければ)

→死亡リスク、入院リスクの改善効果

×(クレアチニンリアランスCcr<30ml/minの腎不全合併)

×(K値>5mEq/L)

スピロノラクトンとエプレレノンの差はないが、エプレレノン(セララ)は女性化乳房はない

 

直接的レニン阻害薬はエビデンスはない

 

■植え込み型除細動器ICD

LVEF<35%症例に対する予防的ICD留置は死亡リスク軽減

 

HFmrEF 40%<EF<50%

heart failure with midrange ejection fraction

これは、いわゆる境界型

最近の考え方で、まだ効果的な治療戦略は確立されていない。

 

 

最近大塚製薬で開発された新薬、ARNI「エンレスト」にも期待

 

心不全の病態を悪化させる神経体液性因子の一つであるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の過剰な活性化を抑制するとともに、RAAS と代償的に作用する内因性のナトリウム利尿ペプチド系を増強し、神経体液性因子のバランス破綻を是正することを一剤で可能にした、新しいアプローチの薬剤。

「エンレスト」は、左室駆出率が低下した心不全(以下、HFrEF)患者を対象にした海外第Ⅲ相PARADIGM-HF試験において、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬であるエナラプリルと比較し、心血管死および心不全による入院からなる複合エンドポイントのリスクを有意に20%減少させた。エナラプリルを上回る生命予後改善を統計学的な差を持って示した薬剤は、「エンレスト」が初めて。また、海外での試験結果を踏まえ、日本人HFrEF患者を対象に国内第Ⅲ相PARALLEL-HF試験を実施し、主にこれら2試験の結果に基づき製造販売承認を取得した。

 

以上

 

褥瘡万能薬!? アクトシン+ユーパスタ配合剤

以前形成外科医が使用していた、ブクラデシンナトリウム軟膏(アクトシン軟膏)+白糖・ポピドンヨード配合剤(ユーパスタ)の混合軟膏について簡単にまとめる。

 

まずは、アクトシン

肉芽形成促進や上皮化促進を目的

 

そして、ユーパスタ

商品名が他にもイソジンシュガー、ネグミンシュガー、ポピドリン、メイスパン等様々あるが、白糖の創傷治癒促進作用とポピドンヨードによる殺菌作用を目的

 

使用法としては、通常、初期のwound bed preparation (創面環境調整)にはユーパスタを使用し、その後Moist wound healing(浸潤環境下療法)にはアクトシン等を使用することが多い。

しかし、ユーパスタを使用したことがある医療者はわかるだろうが、硬くて意外と塗りにくい。

そして、ユーパスタからアクトシンへと病期の移行に応じて軟膏を変更するタイミングが難しい。

 

そこで、両者を混合させた混合軟膏の考え方が普及しつつある。

 

混合することで、得られるメリット

  • 看護師が使いやすいオールマイティ

(病期をそこまで意識せず、初期から治癒までこれ1つで可能なケースも)

  • 塗りやすい

 

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デメリットとしては、

  • 刺激性があるので塗布による痛みがあることがある
  • 両者基剤がマクロゴールで創面は乾燥傾向→過乾燥も
  • アクトシンの冷所保管により管理が面倒
  • 同時薬剤使用により査定されることも(経験未)

 

混合比率は、アクトシン:ユーパスタ = 3:1

参考文献は、こちら

 

使用期限はコンタミ面で1ヶ月としていた

呼び方は、正式名称は、A-U mix軟膏で、その他アクネグ、mix軟膏、褥瘡Aセットなど施設毎様々

 

アクトシンがやや高額な薬価なため、老健療養病棟では難しいかも。。

 

ただ、現場の看護師が洗浄し創傷評価していく際には、ころころ軟膏を変更するよりはこの混合軟膏ベースに、プロスタグランディン軟膏やbFGFスプレーなど症例に応じてアレンジしていく方が混乱も少なく、理解もしやすいと思う。

 

適切な軟膏の選択以上に適切な除圧と摩擦軽減のケアが重要で有り、適切な体位変換や体圧分散寝具の導入のタイミングなど、施設や病院毎の介護力や看護力にかかっていることが多い。

 

なかなか治癒しない褥瘡を見た時には、薬剤や被覆材の選択以外に、これらのことを1から洗い直し、情報収集する必要がある。

 

使用経験に関する論文はこちら